Atomic War Bride（1960）

Directed by Veljko Bulajic
StarringLjubisa Jovanovic, Ewa Krzyzewska, Ita Rina, Antun Vrdoljak, Janez Vrhovec, Velimir 'Bata' Zivojinovic

　『ATOMIC　WAR　BRIDE』（1960年）はユーゴスラビアの反戦映画。これが英語 に吹き替えられてアメリカで公開されたわけであります。今回、このレヴューを書くのに、いろいろ調べてみましたが、邦題不明。仕方がないので、『原爆花嫁』って自分でタイトルつけちゃいました。

　ここは名も無きヨーロッパの国。青年、ジョン（アントン・ヴロドジェク）は美しい婚約者マリア（エヴァ・クリュザスカ）との結婚を間近に控えて、うきうきです。新居のアパートメントで、離れていた二つのベッドをくっつけて、来る初夜の期待にけしからぬ部分を膨らませたりしております。さあ、花嫁の家へ行こう。踊るようにして、歩き出すジョン。

　街では号外売りが「宣戦布告だ、宣戦布告だ」と叫んでいますが、頭の中が薔薇色になっているジョンは気づきません。と、そこへ現れた無数の軍用車両。乗っていた兵隊は路上の民衆に、フードつきの雨合羽を配って、「ええか、ぴかどんと来たら、この雨合羽のフードを降ろすのや、もっちゃりしとったら間に合わへんから、今から練習する」わさわさと雨合羽を着込む民衆。

　ジョンはなんだか分からずぼんやりしています。「はい、フード、下げる、遅いなー、目ェぴかどんでやられるで、フード上げる、もう一回、はい、フード下げる、よっしゃええ調子や、はいフード上げて、フード下げないで、フード上げる、あはははは、ひっかかりよったがな」大受けの民衆。そこへ飛行機の爆音が聞こえてきたので、みんな大慌て。兵隊と軍用車両はいずこへともなく走り去り、雨合羽を貰い損ねたジョンは人の雨合羽に無理やりもぐりこもうとして、「こら、なにすんねん、わての手がはいらんようになるやないか」蹴り飛ばされます。ジョン、かっこわりー。

　飛行機の爆音は友軍機のものでした（笑）。ほっとして、マリアの家へ急ぐジョン。既に二人の両親や親戚達が集まっており、ジョンの到着を今か今かと待ち焦がれていました。「大丈夫やろか、戦争や、ぴかどん落ちよるで」蒼白な顔でジョンに尋ねるマリアのいとこ、ジョージ。「心配すな、ジョージ、ぴかどん使うたら何万人も死による、そんな馬鹿はせえへんやろ」「何万人！」元々心臓の悪かったジョージ、ジョンの言葉を聞いているうちに気分が悪くなってきて、はああんとうめいて倒れてしまいます（笑）。

　とりあえず、教会に行って、夫婦の誓いを行うジョンとマリア。「あんたら、今から夫婦や」微笑む神父さん。その瞬間、敵軍の飛行機が攻撃してきました。ばりばり、機銃掃射で破壊される教会、逃げ惑うジョン・マリア・家族。幸い誰にも怪我はありませんでしたが、町へ戻ったジョンとジョージは軍に徴兵されてしまいます。ああ、愛する二人は戦争によって引き裂かれてしまったのでありました。徴兵用のトラックに乗せられたジョンは叫びます。「マリア、手紙頼むで！」「手紙って、どこに？」「知らん」ずっこける私。この二人、コントの真髄を理解してますね。

　恐らくは第二次大戦のロンドン空襲のフッテ−ジである破壊された町を通ってトラックは新兵教育基地へ。ジョンとジョージは軍服を着せられて、激しい訓練を受けさせられます。「ええか、カムフラージュの訓練や、お前らは木になれ」指揮官の叫びに葉っぱのついた木の枝をライフルの銃口に差込み、寄り集まってそれを空に向かって掲げるジョン達新兵。木に見えません。「よし、今度は羊になるのや」地面に這いつくばってメーメー鳴く、ジョン達新兵、だから見えないって！この激しい訓練で心臓の悪かったジョージが死んでしまいます（笑）

　いよいよ任務です。住民がシェルターに避難したあとの町をパトロールするジョン。彼は町に一人残っていた老人をシェルターまで連れていくよう命じられます。老人の腕を取って、シェルターへ行くジョン。「あかん、あかん、空襲警報の鳴っている間は入られへんのや」と言われたのにも関わらず、シェルターの扉の僅かな隙間に腕を差し込むジョン。「あいたたた」腕を挟まれてしまいました。その隙に老人は逃げ出しますが、敵軍の爆撃にあってあえなく死亡。

　ジョンはすったもんだの末にシェルターに収容されます。そこで、ジョンは偶然にもマリアと彼女の家族に再会するのでありました。「ああ、わたし、会いたかったんよ、ジョン」ジョージの死を告げられて悲しむマリアでしたが、なにしろ長いことお預け食っていた二人です、興奮のあまり小鼻膨らませて、シェルターの隅で始めようとしますが、とつぜん大統領の緊急放送が始まって中断。ジョン、股間を抑えながら、「そんな殺生な」

　シェルター内に設置されている大画面テレビに映る大統領とその側近。「我が国は原爆の使用を決意しました。勝利のためにはやむを得ません」次に科学者がでてきて「我が国のミサイルには、6メガトンの弾頭とテレビカメラが装備されています。皆様、クリアな画像で、敵国がミサイルで蒸発するさまをお楽しみください」これが本当に見えるんだよ（笑）。雲海の中を飛行する6メガトンの原爆ミサイル。やがて、高度を落として、敵国の都市目掛けて急降下、逃げ惑う女子供、ちゅどちゅどちゅどどどーん（大笑い）。ひでえなあ。これ。

　このあまりといえばあまりな光景にシェルター内の民衆の怒りが爆発。ジョンが音頭を取って、反戦を大統領に訴えようということになります。シェルターを出て、廃墟の中をデモ行進する民衆。しかし、軍隊が押し寄せてきて、あっさり阻止されてしまいます。指揮者である中尉は先頭にたっていたジョンを首謀者として逮捕しあまつさえ、銃殺を命じるのでした。彼を守ろうとしてしがみついていたマリアも中尉に「お嬢さん、わてがええアドヴァイスをあげまひょ」と言われて気を抜いたとたん「それ、二人を引き離せ！」そんな手にひっかかるか、マリア。

　銃殺隊のライフルがジョンに向けられます。ああ、神も仏もあるものか。その時、絶好のタイミングで、「平和でんがな、戦争は終わりでんがな、あの鐘の音を聞きなはれ、戦争は終わりましたんえ」という知らせ。おおはしゃぎする兵士たち。ジョンもマリアと大喜び。「中尉さん、今度、家へ来てください、美味い夕食食わせますさかい。他の兵士の皆さんもどうでっか」なんて暢気なことを言っています。中尉も満面の笑みを浮かべて、「そら、おおきに、よろしいなあ」しかし、確認のために無線連絡をしてみたら、「何です、あの鐘は、敵の首都がやられたという知らせなんでっか、戦争は終わってない？はあ、あいつを撃ち殺せ、へ、了解です」再び、マリアとジョンを追っかけまわす兵隊達。なんじゃこりゃ。

　そこに大統領が現れて、捉えられたジョンと戦争と平和について問答します。その時、敵国の原爆ミサイルがこちらへ向かっているという知らせが入ったものですから、さあ大変。あわてふためいて、隠れ場所を探すジョン・マリア・大統領・兵隊たち。ちゅどちゅどちゅどどどーん。生き残ったのはジョンとマリアだけでした。ドリフのコントのように、爆発でぼろぼろになった二人は新婚生活を送る予定だったアパートメントの廃墟にたどり着き、そこで静かに息絶えるのでありました。ちゃんちゃん。

　生真面目な反戦映画なんですけど、サタイア風のギャグがちりばめられていて、なんだか、とってもお間抜け。マリアなんか、最初から最後までずーっと花嫁衣裳なんですから（笑）。

　ただ、お金の掛かっている映画らしく、ラストの廃墟のセットには目を見張らされました。おざなりになりがちな流用フッテ−ジとのつながりも丁寧でフッテ−ジで火が燃えていると、合成された実景にまで煙が流れてくるという芸の細かさ。だからどうしたって感じはしますが。

　モノクロ・スタンダード・モノラル。ダブルフィーチャーのDVDなので画質はあまり良くありません。音質は普通、なかなか聞き取り易いです。特典としてアメリカの50〜60年代の原爆対策のTVスポットが収録されています。サムシング・ウィアードのDVD。

Studio: Image Entertainment
Theatrical Release Date: 1960
DVD Release Date: April 16, 2002
Run Time:84 minutes

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