The First Man into Space （1959年）
　　　宇宙の怪人

　今回の作品は1959年の英ＭＧＭ映画『FIRST MAN INTO SPACE』（邦題名『宇宙の怪人』）、宇宙飛行士がモンスターになって戻ってくるという『原子人間』タイプの映画ですが、怪物の造形など結構コワク、また演出の巧みさもあって、夜中の一時過ぎに見ていて、もうやめようかと思っちゃったくらいでした。

　ニューメキシコの基地から、ごうごう飛び立つＢ-29。機体下にはＹ-12小型ロケット実験機を抱えております。パイロットは、腕利きであるものの、頑固で、はねっかえりのチャールス・ダン・アーネスト・プレスコット中尉（ビル・エドワース）。中尉は高度二万フィートでＢ-29から切り離され、ロケットエンジンに点火。人類未踏の超高空を目指すのでありました。

　この実験の指揮者、ダンの実の兄であるチャールス・アーネスト・プレスコット少佐（マーシャル・トンプソン）、彼はスーパーバイザーのポール・ヴァン・エッセン博士（カール・ジェフ）とともに、実験を見守っています。やがて、実験機は当初の予定高度である100マイルを突破。プレスコット少佐はダンに引き返すよう命令しますが、彼は無視して、上昇を続行。そして既存の高度記録を破ったことに満足したダンは機を反転、帰還しようとしますが、バランスを失ってきりもみ状態に陥ってしまいます。エッセン博士のアドヴァイスでからくも帰還を果たすダン。でも、この男、機体をほっぽらかして、ガールフレンドのティア・フランチェスカ（マーラ・ランディ）のところへ行ってしまうんですねえ。当然、チャールスは激怒して、お説教かますわけですよ。

　ふて腐れたダン、次のＹ-13実験機を使った実験でも命令を無視してしまいますって、こんな奴、大事な実験機に乗せるんじゃないよ。高度100マイルを突破した彼はに、非常用の推進剤まで使ってついに高度250マイルに達したのでありました。「馬鹿が、余生を衛星軌道を周回したまま過ごすことになるぞ」とつぶやくチャールス。ダンは実験機のコクピットで「やった、俺は宇宙に進出した最初の人間だ！」と叫んでおります。しかし、その直後、謎の隕石群に遭遇する実験機。ダンは自分を襲った苦痛に絶叫しながらも、コクピットと機首部分を機体から分離、なんとか地球への帰還を果たそうとするのでした。

　Ｙ-12，Ｙ-13の試験フライト、例によって軍の記録フィルムとほんのちょっぴりの特撮シーンを用いて再現されています。ここで使われているフィルムに映っているのは、はっきりと断定できないのですが、どうも、Ｄ-558�Uスカイロケットらしい。　

　地元警察の協力によって、実験機は発見されます。だがパイロットのダンの姿はどこにも見当たりません。発見された機体は、不気味な物質に覆われており、現場に駆けつけたチャールスは弟の死を確信したのでした。フランチェスカを尋ね、弟のことを知らせるチャールス。チャールズはめそめそと泣くフランチェスカに「あいつは親譲りの無鉄砲で子供の頃から損ばかりしていた。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間程腰を抜かした事があるし、母が病で死ぬ二三日前には台所で宙返りをしてへっついの角で肋骨を撲って大いに痛がっていた。そんな奴だったから、無茶して死んじまったんだ」その夜、病院の血液銀行に迫る、黒い影。そのなにものかは、物凄い力でドアを破り、貯蔵してある血液を撒き散らすのでした。不審な物音に駆けつけた不幸な看護婦は、どて、ぽき、ぐしゃ、殺された！

　翌日、ニューメキシコ州警察のウィルソン警部（ビル・ナギー）の訪問を受けるチャールス。ウィルソンは機体が発見された場所の近くにある農場で牛が殺されるという事件があったことをチャールスに教えます。彼は、その事件と実験機に何か関係がないかと疑っていたのです。そんな彼らにもたらされる血液銀行襲撃のニュース。チャールスとウィルスは現場に駆けつけます。そして、チャールスは、犠牲者の看護婦の傷口にきらきら光る微小な物体を発見。その物体は、殺された牛からも発見されるのでありました。しかも、牛の死体には、例の物質に覆われた酸素マスクがくっついていたのです。これはひょっとすると・・・、チャールスは恐ろしい疑惑に苛まされるのでした。

　こうしている間にも、怪物の犠牲者は増えるばかり。仕事に出かけようとするトラックの運転手に忍び寄り、いきなりがつん。「グエッ！」絶命した運転手を引きずりだして、トラックを奪う怪物（笑）。

　暴走する乗用車を止めた警察官二人が見たものは、運転手と思われる女の死体と彼女を殺して乗用車を奪ったらしい怪物。警察官は銃を乱射しますが、怪物にはまったく効果なし。犬のおまわりさん、困ってしまって、わんわんわわん・・・、どて、ぽき、ぐしゃ、殺された！

　ヴァン・エッセン博士と協力して機体を覆っていた物質を調べるチャールス。この物質は、Ｘ線や赤外線を遮断してしまう性質を持っていました。この物質に覆われていたので、ダンは爆発的な減圧を生き延びたのです。そして、シート状の物質を腕にまいて、スポンジを殴りつけるチャールス。ああっ、スポンジが切り裂かれたではありませんか。この切り口の様子は怪物の犠牲者達と同じです。そうやっぱりあの怪物はダンだったのです。

　研究所の助手として働いていたフランチェスカ、チャールスからこのニュースを聞いてめそめそめそ。顔を上げるなり、ギャーっとスゴイ悲鳴をあげます。見ている僕もどきっとしてます。二人の前に現れたダン＝怪物。ダンにはまだ、いくばくかの知性が残されているようで、兄と恋人を襲うことはありませんでしたが、何かを捜し求めるように研究所内を傍若無人に荒らしまわります。実はダン、体をすっかり覆ってしまった物質のために地球大気の気圧では満足な呼吸が出来なくなっていたのです。ヴァン・エッセン博士はそのことに気づいて、所内の放送システムを使ってダンを減圧チェンバーに誘導。チャールスも一緒に入り、ようやく正気を取り戻しかけたダンを助けようとします。

　減圧が進み、口が利けるようになったダンは、自分の身に起った出来事を苦しい息の下から語るのでした。そして、減圧チャンバーの窓を通して見守っているフランチェスカに「ごめんよ、僕はどうしても宇宙に進出した最初の人間になりたかったんだ」そして、がっくりと首を垂れ、絶命するダン。フランチェスカの悲痛な叫びが響きます。

　彼の死を無駄にしてはいけない。次の実験は今回のことを教訓にして、必ず成功させるのだ。と登場人物たちが決意したところで、エンドマーク。

　わりと能天気なところのない、シビアーな映画ですねん。怪物になった宇宙飛行士（げんみつに言えばパイロットなんですけど）、が可愛そうで、可愛そうで、僕、涙でましたわ。

　モノクロ・スタンダード。モノラル、リニアＰＣＭ音声。画質はノイジーですが解像度が高く、鑑賞には必要十分でしょう。音質もさすが非圧縮のデジタル音声らしく、聞き取りやすかったです。イメージエンタティメントのＤＶＤなので、紙ケース。海苔弁式ふた。

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