Kaliman: El Hombre Incredible　　カリマン　1972

　カリマン（ジェフ・クーパー）とは誰ぞ。彼はメキシコのコミックヒーローであります。メキシコなのに、白い全身タイツとマント、赤いターバンという目立たずにはいられない服装で助手の少年ソリン（ニノ・デル・アルコ）を連れて獅子奮迅東奔西走孤立無援四面楚歌絶体絶命埋伏の陣の戦いを繰り広げ、悪を挫いて弱気を助ける、あ、これが男だ、カリマンだ。あ、だれっすか、おい、『カリマン』っていやらしいなあ、あぶねえなあ、もう少しだなあといってにやにやしているのは。

　冒頭リオデジャネイロの空港に降り立つカリマンとソリン。二人はリオ・デ・ジャネイロで行われる心理学学会に出席することになっていたのです。カリマンはテレパシー能力を持っていて、学会でこの能力を役立てようとしていたのですな。彼らを迎えたのは心理学者、フェラール教授、教授の女秘書シャラマン、アシスタントのカバレード。フェラール教授の車でホテルまで送ってもらうことになります。到着したところで教授の口から明かされる複雑な事情、「実は心理学者のアバダン教授が首を切断されて殺されたのだ。しかも、その首は見つかっていないんだよ。シャマランはアバダン教授の妻で、今だその悲しみが癒えていないのだ。どうやら魔法・魔術を使うものどもが心理学学会の開催を阻止しようとしているみたいなのだよ」他にも二人の科学者が行方不明になっているのだそうです。心理学学会ってそんな大層なことですか（笑）。

　ちなみにシャマラン、中東の女性みたいにベールで顔を覆っております。彼女は「宗教的理由です」というのですが、なにやらベールの下に大いなる秘密が隠されているように思われてなりません。またソリンは「あんな露出の多い服なのに、顔だけ隠したってしょうがないじゃんねえ」などと子供らしからぬ生意気を言うのでありました。

　カリマンとソリンはとりあえず市内見物、海岸で寝そべっているビキニ美人をにやにや眺めたり、ロープウェイに乗ってみたり。途中、カリマンはソリンに囁きます。「おいたちゃ、つけられとるばい」確かに怪しい二人の男がいます。「用心ばしんしゃい、ソリン」でも何事もなくホテルに帰っちゃう（笑）。そうしてホテルの中庭で「トレーニングするたい」といってソリンと二人でカンフーの練習。うわ、ダサっ！翌朝ホテルのプールでシャマラン、教授、カバレードに会うカリマンとソリン。「カリマン、カバレードったらこんなに暑いのに手袋はめているよ」「うん、昨日もそげんやった、あいつは怪しか」またフェラール教授から事情説明。「いろんなことがあったので、他の科学者のキャンセルが相次ぎ、心理学学会の開催が危うくなっているのだ。カリマン、これが明日空港に着く科学者のリストだ、彼らを守ってやってくれ。ちなみに私の娘、クァリナはスイスに留学中だ」なんか不自然な喋りですが、本当にこうなのですから仕方ない。またカリマンはシャマランの読んでいた本を見て、「ルビアンコ教授の本、読みようとですな、彼は遺伝学の大家ですたい。アバダン教授は彼の愛弟子やったですもんね」不自然な台詞ですが、本当にこうなのですから仕方がない。

　その夜、カリマンたちのホテルに刺客が訪れます。二人のメキシコ人と、おや、あれはカバレードではありませんか、一人のインディオ。やっぱりカバレードはうろんな奴でした。インディオはカリマンの部屋のベランダに潜んでおります。下からカバレードは怪しい装置を使ってカリマンに催眠術をかけ始めるのです。インディオは良く分からないけれども別の装置でその催眠波を中継しているらしい。むわん、むわん、「カリマン、カリマン、降りてこい、降りてくるのだ」カリマンが部屋を出ると、カバレードはインディオに命令します。「飛び降りろ」インディオは素直に従いベランダから大ジャンプ。ぐしゃり、死にました。要するにこれは口封じということなんですかいの。それだったら、カリマン直接飛び降りさせた方が早いのではないか。一階に下りたところではっと気がつくカリマン。急いで部屋に戻るのですが､なんとしたことでしょうか、ソリンが攫われてしまっていたのです。置手紙に曰く「市の外れの墓地にソリンはいるぞ」って何時の間にそこまで運んだんだ（笑）。「はやく助けにこないと酸素がなくなって死ぬぞ」そりゃ、おおごとたい、墓地へ急ぐカリマンでした。

　カリマン、得意のテレパシーで見事廟堂に閉じ込められていたソリンを救い出すのですが、待ち伏せていたのがさっきのカバレードと子分のデブ。カリマンは二人を相手に戦い、見事待ち伏せを撃退するのでした。この時、隠れていたソリンをデブが襲おうとしたのですが、それを救ったのが、骸骨タイツを着た奇妙な人物。いくら墓場だからといって、なんでそんなのがおるんかいの。

　カリマン、デブを連れてホテルへ戻ります。ところがその後からついてきたのが、またもカバレード。彼の車のトランクをたまたま通り掛かったホテルのボーイが開けるとぎゃーっ、野獣のような唸り声とともにインディオが二人飛び出してきて、ボーイをどてぽきぐしゃ。何なんだ、こいつらは。一方、カリマンは教授たちの前でデブの尋問に取り掛かります。「カリマン、この男はオシだ。どうやって尋問するんだ」「テレパシーですたい、まかせときんしゃい！」ここに飛び込んできたのがカバレード。彼は脳に直接作用してその機能を停止させてしまうという光線銃でカリマンをびびび。カリマン、その光線からようやく逃れて反撃しようとするのですが、ここにさっきのインディオ二人が現れます。「ふっふっふ、カリマン」これはカバレード。「こいつらはゾンビだから、お前の攻撃は効かないぞ」さらに突然のフェラール教授の裏切り、彼は棒っきれでカリマンぼかっ。カリマン、昏倒します（大爆笑）。

　場面が変わっていきなりジャングルの中。なにやら研究室のようなものをジャングルに建設して怪しい研究をしている悪の大首領みたいな人が登場。名前をヒュウマノといいます。この人、クークラックスクランのような頭巾をかぶって、但し赤色ですが、その上からサングラス、タモリかお前は（笑）。とにかくあやしい。そして彼にかしづく従者のパーフェクトゥ。この人はえははは、えはははと笑いながらミスをした下働きのインディオたちを容赦なく鞭打っております。もう一人、小人の女性アルバ。この三人組で『地獄の黙示録』のカーツ大佐みたいなことをやっている訳ですね。カリマンたちはここに連行されようとしていたのです。

　ジャングルの中を進むカバレード、カリマン、教授たち。教授は疲労に耐えかねてがっくりと膝をつき、「カリマン　許してくれ、私は娘のクァリナを人質にとられているんだ。協力しないと娘の命はないと脅かされたのだ」カリマン、そこはヒーローですから爽やかな笑顔を見せて「先生、なんば言われますとか、おいは先生ばちーっともうらんじゃおりまっせん。悪かとは娘さんを人質にとった奴ですたい」そう言った口が渇かぬうちに、ソリンと二人だけで逃げるカリマン（大爆笑）。やっぱり少し頭にきていたのね。

　さあ、カリマンの到着を楽しみにしていたヒュウマノは大激怒。彼はパーフェクトゥに命じてカバレードを鞭打ちさせるのでした。これでカバレード、自分のミスを棚に上げての逆恨み（笑）。一方首尾よく逃げおおせたカリマン、敵のアジトを探してジャングルをさまよっています。この間、ソリンが小猿と仲良くなる心温まるエピソード。いらん、そんなの。

　ヒュウマノはこの研究室で人間をミューテーションさせる研究をしていたのです。人間の体に動物の脳を移植してゾンビにしたり、人間を首だけにして生かしておいたり、死んだ人間をよみがえらせてやっぱりゾンビにしたり、いろいろやっております。なお、冒頭で死んだといわれていた、アバダン教授はこの研究室で首だけになって生きておるのですね。教授と対面させられたシャマランは「びわーっ」と凄い悲鳴。おまけに、ヒュウマノに顔のベールを剥ぎ取られてしまいました。ばーん、現れたのは醜く焼け爛れた顔。シャマランはこれをベールで隠していたのです。

　さて、アジトを発見したカリマン、勇躍忍び込もうとしますが、トーテムポールに仕掛けられていたカメラであえなく発見されてしまいます。パーフェクトゥ、えひひひと笑ってスィッチを入れるとトーテムポールからうわんうわんという大音響。「こらまたうるさか、耳がやぶれそうばい！」もがき苦しむカリマンですが、トーテムポールに繋がっている電線（笑）を見つけてえいっ、引っ張ったら壊れてしまったという・・・。カリマン、襲い掛かってきたインディオ＝ゾンビたちを蹴散らすのですが、ぷすりと体に麻酔弾を打ち込まれ、基地に連行されるのでありました。ソリンは他のインディオ＝ゾンビに捕まってしまい、フェラール教授、シャラマンとともに木で作った檻に入れられてしまいました。

　研究室に運び込まれたカリマン、ぱっと意識を取り戻すと縛られていたロープをあっさり切ってしまいます。彼は診察台に寝かされていたクァリナを発見、助けようとするのですが、そこに立ちふさがったのがヒュウマノとパーフェクトゥ。「カリマン、わしの偉大なる研究成果を見よ」がーっと扉が開いて現れたのは一つ目で毛むくじゃらの怪人。「わっはっは、これは鉱石をミューテーションさせて作った怪物なのだ。こいつにカリマン、お前の脳を移植するのだ。そうすれば世界最強の怪物となるぞ」やっぱりそういうことですか（笑）。それと石から作った怪物ってなに？

　ひょっとしたら私が英語字幕の意味を取り違えているのかもしれません。だって、石から作った怪物なんてあまりにヘンだもの。

　一方、檻に閉じ込められていたソリン、檻の隙間からあっさり脱出、ええっ？すやすや寝ていた見張りの鍵を奪ってしまいます、ええ？何、これ、どういうこと、ヒドイ。捕虜の皆さんの鍵を全部開けて、心を入れ替えたカバレードも助けます。そして始まる大反乱。ゾンビ対人間の戦いです。この間、研究室ではカリマン対石怪物の戦い。しかし盛り上がらぬこと夥しい。カリマンたくみにヒュウマノと位置を入れ替えて同士討ちに誘います。そして、マスクを剥ぎ取られたヒュウマノの正体はなんと、ルビアンコ教授、みなさーん、この人を覚えていますかあ。ホテルのプールでシャマランが読んでいた本の著者ですよう。ルビアンコ教授、石の怪物、パーフェクトゥ、互に戦って自滅するオソマツ。ゾンビ達も全部やられて、ここにルビアンコ教授の恐怖は終わりを告げたのであります。

　意気揚揚と帰途につく一行。シャマランは嬉しそうにあのベールの下の醜い火傷をばりばりと剥ぎ取ってしまいます。あれも彼女の変装だったのです。ええ？、なんで？どういう意味？しかもシャマラン、あの骸骨タイツを取り出して、ソリンに「どう、これに見覚えはない？」ああ、墓場でソリンを救ったのはシャマランだったのですって、ちょっと待てや、あんた、このジャングルまでわざわざそんなもの持ち込んだのかい。それになんだって、わざわざソリンを助けるのに骸骨タイツ着なくちゃならないの、ヘン、絶対へん、こんなのおかしいって（笑）。

　空港から飛行機で飛び立つカリマン、ソリン、ここでエンドマーク。

　メキシコ版インディアナ・ジョーンズみたいなものなんですかねえ、この人ァ。こちらのほうがよほど古いけれどもどうしてもパチモンに見えてしまうのは何故なんでしょ（笑）。またソリン、普通だったら、こまっしゃくれた智恵を出してヒーローを助けたりするのですが、こいつったら単なる足手まといなの。これもメキシコ映画の常識なのかなあ。

　カラー・スタンダード、3チャンネルステレオ。ジャケットには5.1チャンネルと表示してありますが、まったくのウソッパチ。ライト・センター・レフトの3チャンネルのみ。画質はノイズが酷くって水準以下。英語字幕つき。VanguardCinema のＤＶＤ。

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