Return Of The Fly （1959年）　蝿男の逆襲

　オリジナルの『蝿男の恐怖』（1958年）は紛れもない傑作で、ドルビーデジタルリミックスのＬＤを持っていたりもするのですが、私、今まで続編の『蝿男の逆襲』を見てなかったんです。そこで、今回購入したのが、『蝿男の恐怖』と『蝿男の逆襲』がカップリングされたＤＶＤ、これで約17ドルなんですから、泣けてきますな。

　警告、警告、このＤＶＤのリージョンは1です。したがって日本国内のＤＶＤプレーヤーでは再生できません。警告、警告。


　オープニングは前作『蝿男の恐怖』でアル・へディソンの頭をぶっ潰した悲劇のヒロイン、ヘレンの葬式から幕をあけます。参列していたヘディソン息子のフィリップ（ブレッド・ハーセィ）はヘディソン兄のフランシス、前作から引き続いて出演のヴィンセント・プライスに事件の真相を問いただすのでした。こいつももうオトナやから、馬鹿なことはせえへんだろうと思ってアル・ヘディソンが蝿男になっちゃったくだりを話して聞かせるフランシス、あにはからんやフィリップはよせばいいのに「よし、僕がお父さんの研究を引き継ぐ」と決意してしまいます。

　フランシスが反対して（当り前ですな）手伝ってくれないので、フランシスのところで働いていたアラン・ハインズ（ディヴィッド・フランクハム）を引きぬき遺産として残された屋敷に研究室を設け、自前の金で研究をスタートするフィリップ。坊ちゃんはええですな。こぶ平師匠みたいですな。おまけに、この屋敷にいる、家政婦の娘、セシリア（ダニエル・ディ・メッツ）が可愛くって、しかもフィリップと幼馴染なんだそうで、まったくちぇっ！です。フィリップ、蝿男の息子のくせに、蝿が怖いらしく、ぶーんと飛んでくると、きゃっとかいってセシリアにに抱きつきよる。ますますちぇっ！です。

　研究を開始したフィリップ、映画だからどんどん進んでモルモットの電送も、体のサイズがちと大きくなってしまうという問題があったものの（大問題じゃん）、まずは成功。フィリップ、大喜びです。一緒に喜んでいたアラン、フィリップと町に出ると、こっそり葬式屋、天国社に赴き、経営者のマックスに面白い研究やってんだけど買わないと持ちかけます。実はこのアラン、名の知れた犯罪者で本名がロニー・ホームズ、殺人の罪でスコットランドヤードから追われているというとんでもない奴だったでした。

　さらに研究を進めるフィリップ。再び、モルモットを非実体化させ、時間をおいて、実体化させることができるかどうかテストしようとします。後は翌朝のお楽しみ、といって寝てしまうフィリップ。アランはにやりとして電送装置の設計図などの重要書類をスパイカメラでぱちりぱちり。と、そこに現われたのが、スコットランドヤードの刑事、「ここであったが百年目、おとなしくお縄につけえ」と言われたアランは刑事を殴り倒して電送装置につっこみ、非実体化させてしまいます。あ、あ、そんなことしたら、あかんて、モルモット入ってるって。アランは装置の作動音で起きてきたフィリップを研究が気になってとかごまかして追い払うと、刑事を実体化させるのですが・・・。あ、アハハハ、手足がモルモットになっているモルモット男や、アハハハ、まさかと思っていたけどほんまにやりおった、モルモット男、アハハ、ヒドイ、カッコ悪い、アハハハハ。

　アランはそのモルモット男と手足が人間になった可哀想なモルモットをぶっ殺し、マックスと協力して、死体を捨ててしまいます。酷いことにアランはモルモットを踏み潰すのですが、可愛らしいモルモットに小さな手足がついていたのに、アランのクツの下になると、手が人間そのままのデカさに戻っているのに、御注目。特撮使えんかったみたいですね。

　ほっとしてアランは研究室に戻ってきたのですが、何かおかしいことに気づいたフィリップと鉢合わせ。アランはまたフィリップを殴り倒し、電送装置につっこんで、ふと気づいていれた蝿と一緒に電送ミーックス！はい、お待たせしました、蝿男の出来あがり。アランはセシリアの電話で駆けつけたフランシスを拳銃で撃ち、車を奪って逃げてしまいます。前作と同じく、あひる声で「助けて、僕はここだよ、助けて、セシリア」と叫ぶ、蝿の体についたフィリップの頭がすっげえ不気味悪いです。また、慌てて研究室を逃げ出そうとした蝿頭のほうが、まだその頭の大きさになれていなかったのか、電球の笠にごんとぶつけるのがいとおかし。

　屋敷を抜け出た蝿男はずるずると蝿になった片足を引きずりながら葬式屋、天国社に忍び込んで、マックスをごぎり。そこに現われたアランもごぎり。アランの死体を棺桶にいれておいたのは蝿男らしからぬおシャレさ。そんな蝿男をフランシスは事情を知っている警部と協力してとっつかまえ、フィリップの頭付蝿と一緒に再電送します。元の姿に戻ったフィリップ、めでたし、めでたし。喜んだセシリアをがっと抱きしめて熱烈なキス。ああ、あんな美人とキスできるのなら、僕、蝿男になってもいいや。

　前作の実験の犠牲になった科学者の悲劇という格調の高さはみじんもなく、ずいぶんと俗な物語になってます。でも、所詮“蝿男”、人間の体に蝿の頭がついているゲテなものなんですから、気取ってみても仕方ないのです。

　モノクロ、スクイーズのシネスコ収録、ドルビーサラウンドリミックス。画質は時折ふらつくものの、極上、こんな美しいモノクロ画面は初めてです。英語・フランス語字幕つき。ドルビーサラウンド音声に加えて、オリジナルのモノラルサウンドも収録。

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