I Married a Monster from Outer Space　宇宙船の襲来　1958

　『宇宙船の襲来』（『 I Married a Monster from Outer Space』1958年）いろんなところで作られた“おら、嫁っこさ、100万光年のかなたから探しに来ただ”映画の一本。己の容貌顧みず、結構ええ体のおねえちゃんを攫おうとするじつに憎むべき宇宙人、それでいて、「ようやく愛というものを理解した」などと言い出す図々しさ。僕、やっぱりこういうの好かんわ。

　警告、警告、このＤＶＤのリージョンは1です。したがって日本国内のＤＶＤプレーヤーでは再生できません。警告、警告。

　ここはアメリカ　ノリスビルの町。結婚を明日に控えたビル・ファレル（トム・タイロン）は町の酒場で悪友のテッド（チャック・ワシル）、サム・ベンソン（アラン・デクスター）たちと祝い酒に明け暮れております。いいかげん酔っ払ったビル、「うい、ひっく、おらぁ、花嫁さんにあってくるど」仲間の「結婚前日に花嫁と会うのは縁起が悪いよ」「馬鹿、放っといてやれ、やりたいんだよ、あいつは」という声に送られて車に乗り込みます。ぴゅーっと走り出したのですが、前方道路に寝転がっている人影、といってもあからさまな人形ですが（笑）、を発見。急停車します。「どうしたんらろ、おっさん、こんなとこで寝てたら風邪ひくろ」車を降りたビルを待っていたのは出た、世にも恐ろしげな怪物。円い口にうにょうにょと延びた管が恐ろしい。しかもひかひかと点滅しています。ひっと立ちすくんだビル、むやむやと怪しい煙に取り巻かれ消えてしまったのでありました。

　翌日、結婚式会場でなかなかやってこないビルを心配する花嫁のマージ（グロリア・タルボット）。おろおろするサムやテッドに「あんたたち、昨日ビルに何飲ませたのよ！」「いや、そんな、ワインとビールだけだよ」ってSF映画の会話じゃありません。よもや結婚式も中止かと思われたその時、ようやくビルが現れます。「ビル！」と歓喜の叫びを上げたマージ、ぴょんと彼に飛びついて、ぶちゅぶちゅぶちゅちゅちゅー。そのあまりにも激しいキスにマージのママ（マリー・トレーン）が「あんたたち、まだ結婚してないんだから、ちょっと早すぎるわよ」やっぱりSF映画の会話じゃありません（笑）。

　はい、結婚式です。感激のあまりビルが指輪をマージの指にはめることを忘れてしまっています。神父さん、ビルに目配せして、右手の人差し指と親指でわっかを作り左手の指を通す仕草。ビル、びっくりして、思わず「神父さん、神父さん、そりゃ早過ぎます」実際の映画にはこんな場面はありません、念のため。

　車でハネムーンに出かけるビルとマージ。しかし、マージは早くも彼の奇妙な振る舞いに気がつきます。ビルは車のライトをつけていなかったのです。おかげで他の車と危うく衝突しそうになる有様。ようやくホテルについて寛ぐ二人でしたが、外を見ていたビルの顔に稲光が当ると、ばーん、人間の顔の下からあの怪物が現れたではありませんか。夫が何時の間にか異形の怪物になっているなどつゆ知らぬマージ、ベッドに入ってめでたく貫通。

　一年が過ぎました。早いですな、映画ってのはこういう時は便利ですな。早くも結婚生活に飽きたかマージ、「夫は変わってしまいました。私が愛した人とはまるで別人です」ってな手紙を書いております。そうこうしているうちに、だんだんと進行するモンスターの侵略作戦。今日も今日とて酒場で飲んでいたサム、帰り道でキモチ悪くなってしまい、物陰でおぇーっ。わ、モンスターだ、怯えるサム、ビルのときと同じく怪しの煙に取り巻かれて消えてしまうのでした。でもサム、モンスター、ああ、もう宇宙人と呼んでしまいましょうか、に乗っ取られたとたんに、結婚が決まるという・・・、モテないオタク、結婚できないオタクはこの宇宙人に体を乗っ取られるがよろしいって大きなお世話ですか、そうですか。

　マージの心配ごとがもうひとつ。彼女は子供を切望していたのに、結婚記念日の今日になっても妊娠の徴候がなかったからです。そこで彼女は懇意のウェイン先生（ケン・リンチ）の診察を受けるのですが、何の異常もなし。「今度はビルを連れていらっしゃい。問題は彼の方にあるのかもしれないからね」とウェイン先生。マージは複雑な表情で病院を出るのでした。しかし、何はともあれ、今日は結婚記念日、お祝いしなくちゃいけません。彼女は帰途ペットショップに寄って犬を求めます。結婚記念日のプレゼントとしゃれ込んだのでありました。しかし、このプレゼント、ビルに会うなり、吠える、唸る、歯をむき出すの犬三段活用。仕方なく地下室に繋ぐことになったのですが、あ、ビル、地下室に下りていって犬絞め殺しちゃった。ひ、ひどい。「どうしたの」と驚いて尋ねるマージに「いや、首輪がきつ過ぎて首が絞まっちゃったんだな」こんな言い訳聞いたことないぞ（笑）。折角の結婚記念日が台なしとなります。

　マージはおそるおそるウェイン先生の提案を切り出します。「ビル、ウェイン先生が診察してみたいって言っているのよ。お願い、一度でいいから行って来て下さらないかしら」ビルは笑顔で「ああ、いいよ」と答えるのですが、内心かなりむっとしたらしくあれあれ、卓上ライターを握りつぶしちゃった。この後、サムが来て、ビルと顔をあわせてにやり、にやり。「ようご同輩」ってことなんでしょうな。それからまた攫われる人間、今度はオマワリさんです。

　いよいよ夫の正体を疑うようになったマージ。ある夜、ビルがふらふらと外に出て行くのに気づいて後をつけることになります。ビルはのんのんずいずいと歩いて森の中へ。そろそろとついていくマージ。彼女はあるものをみて仰天します。それはなんと着陸していた宇宙船だったのです。ビル＝宇宙人は宇宙船の側で立ち止まります。ふわふわと怪しの煙が彼の姿を包んだかとおもうと、ばーん、グロテスクな宇宙人がビルから分離したのであります。宇宙人は宇宙船の中へ。マージは取り残されたビルの体をゆすってみるのですが何の反応もありません。それどころかばたりと倒れたビル、その顔の上をゴキブリが這って・・・。「びわー」マージ、悲鳴を上げて逃げ出すのでした。

　マージはあの最初に登場した酒場に駆け込み、バーテンやいあわせた客に今見てきたことを訴えるのですが、当然のごとく誰も信じません。それどころか、ネグリジェにコート羽織っただけのマージにいやらしい視線を投げかけるのであります。マージ、絶望して、外へ走り出ます。そして、通り掛かったパトカーに助けを求めるのでした。マージは親しいコリンズ警視（ジョン・エルドリッジ）に自分が目撃したことをすべて話します。コリンズ警視、「すべてを信じることはできないが、これだけは分かるよ、君は何かを見たのだ」警視、ビルに怪しまれてはいけないとマージを帰宅させるのですが、稲光がぴかり光っておお、現れたのは宇宙人の顔。コリンズ警視もすでに宇宙人の一味となっていたのです。

　これからしばらく続く小騒動。あの酒場の客が、マージの姿を求めて家の周りをふらふら。もういっぺん、マージが夜中に出てきたら、さらって、ヤッてしまおうと企んでいたのですな（笑）。これを見つけたビルがテレパシーでびびび。たちまち警官が駆けつけてきて、もごもご言い分けする男を容赦なく射殺してしまいました。酒場で酒一杯を頼んで粘り、慣れぬ地球での任務について愚痴を垂れるビル、サム、他。「いつまでこんなことをやらなくちゃいけないんだ」「我々の科学者が生殖について研究している。もう少しの辛抱だ」この陰気な彼らに業を煮やしたバーテン、ビルに殴りかかるのですが、まるで効果なし。逆に拳を怪我してしまいます。ビルは冷たく「ほら、チップだ。これでバンドエイドでも買うんだな」

　酒場にいた売春婦、さあ、帰ろうかと外に出たところ、オモチャ屋のショーウィンドウで赤ん坊の人形を熱心に見ているレインコートの男を見つけます。放っておけばいいものを、好奇心に駆られた売春婦は「ねえ、あんた、どうしたのさ」と話し掛けるのですが、無視されます。「そんなもの見て、面白いの」無視。「ひょっとしたらあんたオタク？」無視。頭にきた女、「何よ、人を無視して、ええ、こっちを見なさいってば、やい、やさしくいっているうちにみなよ！」振り向いたその顔はおお、宇宙人。「びわーっ」と逃げ出す女を光線銃でびびびと蒸発させてしまいます。

　ピクニックに出かけたビルたち。あ、池でボートに乗っていたサムが水に落ちてしまいました。溺れたサムにウェイン先生が酸素吸入させるのですが、なんとしたことか、サムは死んでしまったのです。「なんだ、酸素を吸わせたら死んでしまったぞ」と呆然とするウェイン先生。どうやらこの宇宙人、酸素に弱いらしいって、だったら地球になんか来るなよ（笑）。

　マージはついに決心をします。この事件を他の地域に伝えなきゃ。しかし、ワシントンへの電話は繋がらず、町でFBIに電報を頼んだら、その係員も宇宙人で駄目。車で逃げようとしたけれども道路は封鎖されている。悄然として自宅へ戻ったマージに、ビル＝宇宙人がことの真相を語り始めるのでした。「我々はアンドロメダ星雲からやってきた。我らの太陽系はそりゃいいところだった。酒は美味いしねえちゃんは綺麗だ、わっわっわっわーだった。しかし、太陽が崩壊し始めたのだ。我々は宇宙船を作って逃げたのだが、その時の放射線で女が皆死んでしまったのだ。だから、我々は生殖の相手を見つけるべくこの星にやってきたのだ」愕然とするマージ。その顔にははっきりと「アタシ、こんなのにヤラレちゃったの」と書いてあります（笑）。思いっきり、「うわっ、キモ！」と思っています。

　なおも言葉を続けるビル。「我々の種族に愛という概念はなかった。女との関係もただ“生殖あるのみ”だった。しかし、私はこの星にきて、君と出会い、ようやく愛について理解できたのだ。私は君を愛している。だから、子供を作ろう、レッツ・メイク・ラブ・ナウ！」マージ、逃げ出しました（笑）。彼女はウェイン先生にすべてを話します。最初は信じられぬ面持ちのウェイン先生でしたが、マージが「このままだったら地球は侵略されます、私たち、あいつらの子供を生ませられるのです」と言い募ったのでやっと納得。テッドたちを連れて宇宙人退治に向かうのでした。先生、「よし私に考えがある」どんな考えがあるのかというと、犬を連れていくという・・・。英国貴族の狐狩りみたいですな、どうも。

　地球人一党はマージに聞いたとおり森の中へ。首尾よく宇宙船を発見します。そのとたん、宇宙船上部から突き出すアンテナ。みみみみとテレパシー電波が発信されてビルたちに急を知らせます。彼らは光線銃を手に森へ向かうのでした。また宇宙船からも宇宙人が出動。地球人たちはライフル、拳銃を乱射するのですが、まったく効果なし。「引け、町まで引くのだ」ウェイン先生が叫びます。地球人たち大ピーンチ、しかし彼らを救ったのは2頭の犬、シェパードでした。犬達はわんわん吠えながら宇宙人に襲い掛かり頭部の管を引きちぎってしまいます。ぶぶぶと異様な音をたてて絶命する宇宙人、わっ、気持ちわるい。結局犬に全部やられちゃいました。なんだか、オバＱみたいな宇宙人です。イキオイにのった地球人たちは宇宙船に突入、ついに捕らえられていた人々を発見するのでありました。宙吊りにされた彼らの体からはコードが延びて足元の怪しい機械に繋がれています。なんでも分かるウェイン先生（笑）、「むむ、この装置で人間の容貌・姿・記憶を送信しているのに違いない。この装置のおかげで彼らは人間に変身できるのだ」コードをぶつっと抜きます。すると、宇宙船を助けるべく急いでいたおまわりさん＝宇宙人がうっと倒れて、ぶぶぶぶ、溶けてしまいました。ぶつ、ぶぶぶ、ぶつ、ぶぶぶ、次々に倒れていく宇宙人たち、ビルも例外ではありません。最期に残ったコリンズ警視、「地球征服作戦失敗す。新たな目標を探されたし」と通信装置に喋ったところで、ぶつ、ぶぶぶぶ・・・。ついに宇宙人たちは全滅してしまったのです。

　助け出されたビルにすがりつく、マージ。「ああ、あなた」「ああ、お前」これはビル。彼らの背後でちゅどちゅどちゅどどどーん、宇宙船が爆発します。そして、宇宙空間、地球へ向かっていた宇宙艦隊が反転して去っていったところでエンドマーク。

　この映画のモチーフは朝鮮戦争で捕虜になったアメリカ軍兵士が洗脳されて別人となって戻ってきたという所謂“満州実験”にあるのですが、それにやたらと子供を作りたがる宇宙人を絡ませるというアイデアが秀逸、秀逸。面白い映画でありました。

　モノクロ・スクイ−ズ収録ワイド、モノラル音声。画質・音質ともに申し分のない品質です。グロテスクな宇宙人の造形がよく分かりますって分かったって嬉しくないですけどね（笑）。英語字幕つき、Paramount Home Video のＤＶＤ。

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