Mighty Peking Man （1978） 北京原人の逆襲出演 ダニー・リー エブリン・クラフト フェン・ワー
監督 ホー・メン・ファ
ＤＶＤ発売日 2000年5月23日
1977年ギラーミンの『キングコング』と対抗して（丸ごとパクッて）香港ショーブラザースが製作した巨大猿映画。正直、前に紹介した『Ａ・Ｐ・Ｅ』みたいなもんだろうとたかを括っていたのですが、どうして、どうして、前半のヘナチョコシーンで大笑い、また後半では有川貞昌の正当的な怪獣特撮を堪能できるというまさに、一本で二度美味しいという映画でありました。
警告、警告、このＤＶＤのリージョンは1です。したがって日本国内のＤＶＤプレーヤーでは再生できません。警告、警告。
冒頭いきなり大写しになる「ヒマラヤの奥地にて巨大なる足跡発見さる！」という新聞記事。それをみてにやにやしているのは、山師のルー・チェン（フェン・ワー）とその愉快な仲間たちであります。「これはきっと北京原人の足跡や、昔っからヒマラヤで目撃されていたさかい、そうに違いあらへんで、こいつを捕まえて、見世物にしたら、わいら大金持ちや！」場面は変って60年代のインドの村。ぐらぐらと地震で揺れる大地、突然、ヒマラヤの山肌が崩れて、巨大な北京原人が現れます。北京原人は何の躊躇いもなく村を襲撃、村人は投石器で反撃しますがって、なんで、こんなところに投石器があるんでしょうねえ（笑）。村はあっというまに壊滅してしまいます。ここで場面は現代に戻って、ルーの愉快な仲間の一人が「あ、それならうってつけの奴がおりますわ、探検家でハンターのジョニ−・ファン（ダニーリー）言うんですわ。今、女に振られて落ちこんどりますさかい、二つ返事で行く、いいよりまっせ」
酒場で沈没していたジョニ−、ルー・チェンの誘いに二つ返事で「行く」と言います（笑）。牛車のキャラバンを連ねて出発する一行。車輪が川に嵌ったりして難渋したものの、なんとか、最初の目的地である村に到着。ぶわわおーん、お、北京原人かと思いきや、暴れ象だ！暴れ象のスタンピード（大暴走）に翻弄される探検隊。あっ、ひでぇ、インド人ポーターが踏み潰されて血だらけに！ようやく暴れ象の群れを撃退した一行、ルー・チェンの「出発や」の号令でまた進みだします。ちょっと待てエ、あの踏み潰されたポーター、どうしたんだ。
その夜、ルー・チェンに促されて、振られた彼女リンのことを話す、ジョニ−。上昇志向の強い彼女はジョニ−と結婚の約束をしていたのにも関わらず、テレビ局のディレクターであるジョニ−の兄、チャーリーが現れたとたんに乗り換えてしまったんですねー。バラの花束を持ってうきうきとリンの部屋を訪れるとジョニ−、ドアを開けると、真正面にベッドインしているチャリーとリンが！ドアの真正面にベッド、どんな間取だ、これも風水か！チャーリー慌てて「待て、ジョニ−、これはなんでもあらへんのやで」なんだ、お前、もう“入れて”たクセに（笑）。わーわー泣き出すリンに花束を投げつけて立ち去るジョニ−「泣きたいのはこっちや」
翌日、ジャングルを進む探検隊に突然襲い掛かった虎、「わあっ」と驚いた拍子に底なし沼に落ち込むチャーリーの愉快な仲間と二人のインド人ポーター。がぼがぼと沈んでしまいました（笑）。虎は不運なインド人ポーターに襲い掛かって左足の膝から下を齧りとってしまいます。ジョニ−の活躍でなんとか、虎を撃退した一行でしたが、ルー・チェンは無残にも正座して左ひざから下を隠してもがき苦しむインド人ポーター（要するに足がなくなったフリをしているのですわ）を射殺するのでした。「あ、なんて酷いことを！」抗議するジョニ−に、「ふん、苦しみを終わらせてやったのや」香港人の山師といったらこんな奴ばっかりなのでしょうか。
次に一行が差し掛かったのは、海に面した断崖絶壁。香港からヒマラヤに行くのに、なんで海と思いますが、とにかく、この絶壁を登るわけです。がらっ、わあ、石が崩れてまたルー・チェンの愉快な仲間と二人のインド人ポーターが海に落下。あまりのことにルー・チェンはなおも進もうとするジョニ−を一人残して、逃げ出してしまいます。「あいつはキチガイや、あんなのにつきあっていたら命がいくつあってもたらへん」
一人残されたジョニ−、そんな彼の前についに北京原人が姿を現します。ばきばきと森の木をへし折りながら、ジョニ−を追っかけ回す北京原人。「あ、いた」ジョニ−、転んで気を失うのでした。ジョニ−の命は風前のともし火かと思われましたが、突然、現れた金髪の女ターザン、もちろん、獣皮のビキニ姿だ！サマンサ（エブリン・クラフト）によって救われます。サマンサが北京原人に「やめなはれ、ウータン」と声を掛けると、あら不思議、北京原人は彼女の命令に従うのであります。
このサマンサを演じた女優さん、こんな映画に（笑）勿体ないくらいの美人で超ナイスバディ。きっと女優になりたくってアラバマから出てきて、ウェイトレスのアルバイトをしていた頃（あんた、そればっかりやね）、香港から来ていたプロデューサーに目をつけられて、「香港なら映画に出られまっせ」とダマされたんでしょうな。無論、その夜、ホテルの部屋で「な、映画だしたるさかい、ええやろ、させんかい」「ひぃー」という会話が交わされたのに違いないのです。
このサマンサ、幼い頃、飛行機事故でジャングルに墜落。両親は死んでしまったのですが、サマンサは北京原人に助けられ、今日まで成長したのでありました。もうディズニーもびっくりのジャングルの女王状態。北京原人をはじめ、虎や豹などの猛獣達も彼女になぜられて、喉を鳴らすのです。次第に仲良くなるジョニ−とサマンサ。ところが、果物を食べていたサマンサがコブラ（ホンモノ）に噛まれてしまいます。倒れるサマンサ、ジョニ−は必死に傷口から毒を吸い出すのでした。献身的な手当てと北京原人の持ってきた薬草によって危地を脱したサマンサ、ジョニ−と見詰め合い、ぶちゅぶちゅぶちゅちゅー。
ここから、ジョニ−とサマンサが動物達と戯れるイメージシーンがしばらく続きます。サマンサが肩に乗せている豹の金玉が妙にはっきり見えるのがなんとも暗示的。このシーンが終わったら、ジョニ−とサマンサ、洞窟の中でやっているんですね（笑）。うん、なんやね、違う種類の毒液が違う部分に注入されたわけやね。洞窟の外ではやっている二人を見て、北京原人がせつなそうにしているという・・・。
サマンサをものにしたとたん、「サマンサ、香港に行こう、そうして北京原人を世界の人にみてもらうのや」サマンサ、もともと頭があんまり良くない上に、初めてのセックスの快感に酔っていたので、「うん、うちはあんたのいいなりよ」みたいな顔をしております。ジャングルと動物達に別れを告げ、インドの街中へ降りていくジョニ−・サマンサ・ウータン（北京原人）。逃げ出して以来、インドで鬱々としていたルー・チェンも彼らの噂を聞いて駆けつけてきます。「よっしゃ、ようやった、早速船手配して、香港へ運ぶで」船に鎖でしばりつけられて香港へ運ばれるウータン（北京原人）。
サマンサはその痛々しい姿に「鎖はずしてんかー」とルー・チェンに頼むのですが、「お嬢ちゃん、そう無茶を言うたらあかんがな、あんなでかいエテ公暴れたら、船ひっくりかえるやないの、うん、しかし、お嬢ちゃん、ええかだらしとるねえ」一笑にふされるばかり。ジョニ−に泣きついても（本当に泣いている）、このジョニ−の野郎は「それはともかくとして、ここはもうジャングルじゃないから、この服を着なさい」とレザーのボンテージな服を渡すんだけなんですから。サマンサ、一応その服を着てみますが、あまりにも窮屈なのですぐさま海にぽいしてしまうのでした。
途中台風で船が座礁してしまったものの、ウータン（北京原人）の活躍で難を逃れ、無事に香港へ到着。チャーリーはジョニ−が無事だったことを喜び、二人をテレビ局へ招待します。歌番組の収録現場をみて、不思議そうにしているサマンサ、おお、一応文明批判もはいっておりますな、これは。そうして、ジョニ−の無事を喜んでいた人がもう一人、元カノのリンですわ。リンは、ジョニ−を呼び出すと、「うちら、もういっぺんやりなおせへんの？」とか言って彼を口説きだすんです。一度は結婚まで考えた女、ジョニ−の野郎、たちまち情にほだされてリンとぶちゅぶちゅぶちゅちゅー。その現場を偶然サマンサが見てしまったからもう大変。「あんた、都会に戻ってきたら、もう元の女とよりもどすんか」と叫んで、香港の町に飛び出していきます。獣皮ビキニの女が泣きながら香港の町を走る、アハハハ、バカ、「どっきりカメラ」でもこんなこと、しないぞ。
サマンサ、街頭テレビを見て仰天。彼女の大事なウータン（北京原人）が競技場でトラックと綱引きやらされているではありませんか。サマンサはヒッチハイクで（本当である）、競技場に行き、檻に入れられているウータンの足にしがみついて「かんにんしてや、かんにんしてや」と泣くのでありました。ここでにやにやしているルー・チェン登場。また鎖を外してとくってかかるサマンサに「それはええから、ちょっとこっちにきなさい」部屋に連れ込んで、「な、ええやろ、させんかい」、ルー・チェン、サマンサにブランデーたらしてぺろぺろするという実にマニアックなプレイを披露します。
逃げ回るサマンサがカーテン引きちぎったので、檻の中のウータン（北京原人）にこのマニアックなプレイを見られてしまいます。サマンサを追いかけるルー・チェン。ウータン、怒ったね。ついに鎖を引きちぎり、檻もげんばりばりとぶち破って出撃です。「ひいい、エテ公が」ルー・チェン、サマンサ抱えて逃げ出すのでありました。高速道路をぶっこわし、暴れまわるウータン（北京原人）、ついに軍隊が出動します。イギリス人司令官、電話に向かって、「命令や、ペキンマンを殺すのや、どんな手段でもかまへん、なんとしてもペキンマンを殺すのや」もうヘリコプターや、装甲車がぞろぞろ集まってきて、どかん、どかん、さすが、有川貞昌の特撮は素晴らしい、こりゃ、後期の貧乏臭い昭和ゴジラよりよっぽど凄いわ。
ついに、ルー・チェンを捕らえたウータン（北京原人）「げぇっ」と握り潰して地上へぽい。その間にも軍隊の猛攻は続きます。そして、ようやくサマンサを探しはじめるジョニ−。警察に行って、「獣皮のビキニの女を捜してください。彼女だけが北京原人を止められるんです」うんと頷いた警察官、マイクに向かって「女を捜せ、目印は獣皮のビキニやで」というのに爆笑。そりゃ、見つけ易いですな。
ウータン（北京原人）、ヘリコプターからの銃撃にたまらず大出血。血だらけになりながら、故郷の山を思い出させるような高いビルによじ登り始めます。司令官は「よっしゃ、屋上の貯水タンクにガソリンを充満させるのや。爆弾しかけて、焼き殺してしまえ」タンクローリーが集められ、ガソリンがどんどん注入されていきますな。
一方、サマンサを探し出したジョニ−は彼女を連れて、司令官の下へ行き、攻撃をやめるよう頼むのでありました。「そうか、分かった、そのねーちゃんがペキンマンを大人しくさせてくれるのやな、ええわ、頼むわ。しかし、あんた、なかなかええかだらしとるねえ」屋上に上がってきたサマンサをみてウータン（北京原人）は狂喜、たちまち大人しくなってしまいます。めでたし、めでたしと思いきや、司令官がらりと表情を変えて、「ペキンマンが大人しい今がチャンスや、攻撃や、攻撃開始や」再び、ヘリコプターから放たれる銃弾の雨霰。サマンサ、ばしばし撃たれます（笑）。ひでぇなあ。
ジョニーは爆弾を仕掛けている兵士達をとめようとしますが、頭を殴られて昏倒。気がついてふらふらしながら立ち上がるジョニ−、ふとタイマーを見ると、ああ、爆発まで後三分しかない！彼はサマンサを連れて逃げようとしますが、もうウータン（北京原人）から離れないと決意した彼女によって、逆に屋上から締め出されてしまいます。ついに起る、大爆発。ウータン（北京原人）は炎の塊となって、地上へ落下したのでありました。そして、瓦礫とかしたビルの屋上でサマンサの遺骸を抱いて、呆然と地上を見下ろすジョニ−。エンドマーク。
カラー・シネスコスクイ−ズ収録 ステレオ音声。英語字幕つき画質は概ね良好なれど、フィルムの傷や退色が散見されるのが惜しい。まあ、サマンサが何故か化粧しているぐらいのことは分かります。音声は高音が歪んでいて、あまりステレオ感もありません。タランティーノのローリング・サンダー・ピクチャーズのＤＶＤ。