Road To Utopia (1945)　アラスカ珍道中

　今回のダシモノ、『アラスカ珍道中』はビング・クロスビィ、ボブ・ホープ、ドロシィ・ラムーアのトリオによる四作目のロードムーヴィであります。次作の『バリ島珍道中』の発表が五年後の1952年であること、『バリ島珍道中』からテクニカラーになったこと、などを考えると、『珍道中』映画は『アラスカ珍道中』まで見ておけば、ＯＫじゃないんでしょうか。

　お断りしておきますが、映画のギャグをなるたけ多く記述しようという観点から、紹介文が非常に長くなってしまいました。それだけ、『アラスカ珍道中』にギャグが多いということでどうか勘弁してつかあさい。

　警告、警告、このＤＶＤのリージョンは1です。したがって日本国内のＤＶＤプレーヤーでは再生できません。警告、警告。


　冒頭、アメリカのユーモリスト、ロバート・ベンチリィが登場して口上を述ます。「この映画はいわば、アカデミーを取らないような作り方をされております。映画会社のえらい人達がこんな映画には説明役がいたほうが分かりやすくていいだろうと考えたので私がいるのです。でははじめましょうか」はい、オープニング。ここは紐育のチェスター（ボブ・ホープ）の屋敷。年老いたチェスターとサル（ドロシィ・ラムーア）が静かに暮らしております。ある夜、新聞の株式欄を読むようなふりをして、こっそり水着のグラビアを眺めていたチェスターに「そろそろ寝る時間ですよ」と声を掛けるサル。その時、ドアベルが鳴って現れたのが、彼らの旧友で35年前にアラスカで別れたきりのデューク（ビング・クロスビー）でありました。彼の思いがけぬ来訪に、驚き喜ぶチェスターとサル。アレからどうしたのという夫婦の問いに答えてデュークは35年前のアラスカでの冒険を静かに語りだすのでした・・・。

　ゴールドラッシュ時代。サンフランシスコのホテルで一人の男が二人組みの強盗スペリィ・マクガゥークに拳銃でズトン。すかさずロバート・ベンチリィが画面の片隅に現れて、「これをフラッシュバックというのであります」駆けつけた娘のサルに「俺が発見した金鉱の地図が盗まれた、アラスカのスカグウェイにいって旧友のエース・ラーソンを尋ねるのだ」と言い残し息を引き取ってしまいます。一方、同じ町の小屋でショウをやっているデューク（ビンク・クロスビィ）とチェスター（ボブ・ホープ）。「グッドタイム・チャーリー」という歌を歌った後、デュークは東洋の神秘、オメガゼロというダシモノでお客の金をむしりに掛かります。不思議の箱の中にお客様の一ドル札を入れると、あら不思議、二倍になりました。今度は五ドル札を入れると、あら不思議、きえちゃいました。増えるも消えるもこの箱次第・・・」実は箱の下の台にチェスターが隠れていて、上手い具合に札の出し入れを按配しているだけだったのです（笑）。そこに、スペリィ・マクガゥークの二人組が警官に追われて飛び込んできたから堪りません。台をひっくりかえされて仕掛けがばれちゃいました。あわてて逃げ出す二人。

　さて、ちょっとお金をこしらえた二人は紐育へ帰るというチェスター、夢を求めてアラスカへ渡るデュークに分かれることになります。デュークはしきりにチェスターを誘いますが、彼はのろうとしません。一計を案じたデューク、チェスターの紙入れを掏り取ってアラスカ行きの船へ。紐育行きの船上で紙入れのないことに気づいたチェスターはアッと声を上げ、アラスカ行きの船に無理やり乗り込んで、デュークに俺の金を返せと叫びます。が、その間に船は出港してしまいました。やむなくアラスカ行きに同意するチェスター、こうなっては仕方ないとばかりに「金は金庫に仕舞っておくのが一番だよ」といって船室の丸窓をあけて全財産をポイ！やれやれこれで安心と笑う二人、はっと気づいて船室から顔を出すが、札束は夜の海に消えていくのでありました。

　一文無しになったので、船で働かされるチェスターとデューク。ひいひい言いながら釜に石炭を放り込んでいます。そこに現れたのは場違いな紳士。デュークにタバコの火を所望するこの紳士にチェスター、けげんそうに「あんた、この映画の出演者かい？」紳士、「違うよ、ここが第十ステージへの近道になっているもんだから」と答えたのには、二人ともギャフン！賞金目当てに船上演芸大会に出演し、歌を歌うチェスターとデューク。しかし、僅かな差で猿回しの芸人にかっさらわれてしまいました。チェスター、じろりとデュークを睨んで「フン、こんなことならシナトラと来るんだった」こうしている間にも船はアラスカへ向けてひた走ります。

　アラスカのスカグウェイに到着したサル、首尾よくエース・ラーソン（ヒラリー・ブルック）を探し当て、金鉱地図奪還の協力をとりつけます。「ありがとう、なんて優しいお方なのかしら」と感激するサルにラーソンは「働き口もないのでは大変でしょう、どうです、私の経営するバーで働きませんか」ここで、またベンチリィ現れて「ラーソンはいけませんな、ラムーアにひらひらの薄物を着せて歌わせようとするんですから」にやにやしながら「怪しからんですなー」また酒場で踊る踊り子たちが尻をこちらに向けた瞬間、ぱっと現れて「これはお客様の側からの方が見えやすいですな、羨ましいですぞ」とつぶやくベンチリィ。森繁の「やりくり社員」、これをパクったのかしらん。

　チェスターとデュークのご両人（まだ働かされている）はスベリィ・マクガゥークの船室を掃除しているうちに例の金鉱の地図を見つけて大喜び。速攻で猫糞を決め込みます。二人は地図を二つに引き裂いて一方はデュークの帽子の中、もう一方はチェスターのシャツの下に隠すことに。二人はスベリィ・マクガゥークをノシて縛り上げると、彼らに変装してまんまと下船するのでありました。ところが、スカグウェイの町にはすでにラーソンの手によってスベリィ・マクガゥークという殺人犯がくるという知らせが回っていたので、二人の姿を見るなり、町の人は蜘蛛の子を散らすように逃げてしまいます。

　よりによってラーソンの酒場にやってくるチェスターとデューク。目ざとく二人を見つけたサル、まずはお色気作戦からということで、二人を代わる代わる彼女の部屋に誘いこみ、シュガーカットよりも甘い愛の言葉をささやくのでありました。チェスターから、うまいこと聞き出してデュークの帽子から地図の片割れを奪い返したサルでしたが、ようやく縛めを解いて追っかけてきたスベリィ・マクガゥークが乱入、デュークとチェスターは町で見つけた大きな毛むくじゃらの犬をお供にしてそりで逃げ出します。彼らを追う、スベリィ・マクガゥーク、ラーソンも取り返したのが地図の片割れに過ぎないことに気づいて、サルを含んだ追跡隊を送り出すのでした。

　根が暢気なチェスターとデューク。生まれてはじめてのアラスカの雪景色を結構楽しんじゃったりしてます。と、その時、ジングルベルの音楽がなって現れたのはなんとサンタクロース。「ホウホウホウ、チェスターとデュークじゃな、二人にプレゼントを持ってきたよ」チェスターとデューク、苦笑いして、「そんな、俺たち、子供じゃないから、いいスよ」「残念じゃのう、素晴らしいプレゼントなんじゃがのう」サンタクロースがプレゼントの袋の紐をとくと、中からゴージャスな美人が二人飛び出して「ごめんなさいねー、チェスターにデューク」がっかりした二人はガラガラを取り出して「ダァダァダァ」

　チェスターとデューク、雪の中に倒れていた女ケイトを発見、介抱しているところにイヌゾリに乗ったサルが現れます！チェスターとデュークはお互いに、「この女、俺に気があるもんだから、こんなとこまで追っかけてきて、クヒヒヒ」と思っているのであります（笑）。でも、近くにはラーソンの追跡隊が潜んでいて、ケイトとサルが地図を奪い返すのを見守っているのです。そうとも知らず、ケイトの薦めに従って近くの山小屋に滞在することになる馬鹿な男二人。

　夕食の為に氷に穴を開けて魚釣りをする、チェスターとデューク。デュークの方ばかり魚が掛かるのでチェスターは腐ること、腐ること。「もう14匹めだぜ、凄いなあ、俺」と威張るデュークでしたが、そこにやってきたサルがチェスターにしな垂れかかったので憤然として小屋に戻ってしまいます。すると彼の釣っていた穴から魚（アラスカなのに、鯉）が顔を出して、「ねえ、ちょいとクロスビィさんはどこにいったの」仰天するチェスターに「アンタ、クロスビィさんに15匹目のアタイが待っているっていってちょうだいな」毒気を抜かれたチェスター、サルと雪の中を散歩することに。突然、チェスター、くるりとカメラの方を向いて、「ついてくんなよ」この後、サルに激しく言い寄られたチェスター、サルにキスされて思わず「この映画ここで終わっちゃってもいいよな」、彼の座っていた雪がじゅーッと溶けるのです。でもサル、どうもチェスターから地図のありかが聞き出せそうもないことが分かって、今度はねらいをデュークに定めるのでした。

　その夜、チェスターとケイトが外に出たのを見計らって、デュークに「チェスターは地図を持って私と二人だけで逃げようと言ったわよ」とウソの告げ口。デュークはかっとなって「地図はチェスターがシャツの下に隠しているんだ」とばらしてしまいます。サルは「実はあの地図は元は私の父のものだったのよ。私は地図を取り返しに来たんだけど、あなたを愛してしまったの。だから、二人で私の、ううん、二人の地図を持って逃げましょう」この女本気なんでしょうか。

　一行が寝静まったころ、一匹の熊が小屋に忍び込んできます。熊はチェスターの横に寝そべるのですが、サルと勘違いしたチェスター、熊の毛皮をうっとりとなでながら「安っぽい模造品だねえ、こんなの着てちゃダメだよ、よし、結婚したら俺が本物の毛皮を買ってやるから」やっと自分が抱いているのが熊だということに気がついて飛び起きるチェスター。みんな慌てふためきますが、熊は何もせずに後から入ってきたもう一匹とともに大人しく小屋を出て行いきます。出口で振り返りざま「魚にばかり喋らせておいらに喋らせないのは不公平だよ」いかになんでも調子に乗りすぎてないですかね、この映画。熊騒ぎでデュークと逃げ出すチャンスを失ったサル、そのまま朝を迎えてしまうと、追跡隊が二人を殺してしまうので、なくなくチェスターの地図を奪ってケイトと逃げるのでありました。

　ようやく起きたチェスターとデューク、女二人が消えていることに気づいて愕然。そこに現れたのがまたも、スベリィ・マクガゥークの悪漢二人組み。イヌゾリを使ってのチェイスが展開されるのですが、雪山に追い詰められたチェスターとデュークは雪崩を利用してスベリィ・マクガゥークを振り切り、命からがらスカグウェイに戻ってくるのでした。

　相棒の犬を店先につないで、ラーソンの酒場に入っていく二人。ラーソンが部下達に「あいつらは大きな毛むくじゃらの犬を連れているんだ」と話しているのを聞いて、ああ、犬を連れてこないでよかったと胸をなでおろす二人。とたんにとことこ酒場に入ってくる犬（笑）。チェスター引きつった顔で犬をそばのテーブルの下に押し込みます。ラーソン、二人に気づいて皮肉まじりに「私らは、スベリィ・マクガゥークという悪者を探しているんですけどねえ、犬を連れているそうなんですけど、知りませんか」チェスターとデュークは冷や汗たらたら。「知りませんねー、そんな犬を連れている二人組みなんて、じゃ、私たちはこれで、さよならー」と出て行こうとしますが、さっき犬を押し込んだテーブルががーっと動いて二人の後に続こうとします（笑）。ラーソンの部下がテーブルをはねのけると犬がワン！奴らだ、ソレッ！捕まえろ。

　たちまち始まる大おっかけ。なんとか巻いて酒場の裏手に回りこんだ二人はラーソンたちにサルがいすに縛り付けられるところを目撃します。何のことはない、ラーソン一味も金鉱が目当てだったのです。彼女を助けるべく、酒場に侵入する二人。早くサルを助けるのだというチェスターを制してデューク、「先に地図を取り返してしまおう」金庫の鍵をいじり始めます。「何か、明かりはないか」と言われたチェスター、手近にあった蝋燭に火をつけてデュークの手元を照らします・・・、金庫の開錠に成功した、デュークは地図を見つけて歓声を上げますが、チェスターが手に持っているものを見てギョッ、「お前、それ、ダイナマイトじゃん」わあっと叫んで窓からダイナマイトを放り投げるチェスターでしたが、犬が咥えて窓から入ってきてしまいました（笑）。再び、あわてふためくチェスターとデューク、どたどた走り回っているうちに、戻ってきたラーソン達と、鉢合わせしてしまいます。「やい、このダイナマイトを爆発させるぞ」とヤケクソで叫ぶデューク。「それ、3.2.1」2のところまで呆然としていたラーソン一味、3のところで、突然動きが速くなって凄い勢いで逃げ出すというギャグあり。チェスターとデュークは閉じ込められていたサルを助け出すとダイナマイトをそのままにして逃げ出すのでした。大爆発でこなごなになるラーソンの酒場。

　なおも、三人を追っかけてくるラーソン一味、崖に追い詰められた瞬間、足元の雪がふたつにさけ、チェスター・サルが向こう側、デュークがラーソン一味たちの側に取り残されてしまいます。デュークは二人の幸せを祈ってハンカチをふり、一味に立ち向かったいったのでありました。

　ここで話は35年後に戻ります。「あれからどうしたんだい」と聞くチェスターに涼しい顔で「なに、ひとりひとり片っ端からノシてやったのさ」と笑うデューク。チェスターとサルに「ところで、結婚してどうだったの、幸せにやってたんだろ、コンチクショー」チェスターは息子を彼に紹介するのですが、それがなんと若き日のビンク・クロスビィ。チェスターが情けなさそうに「養子なんだ」と呟くという秀逸なサゲで映画は終わるのでありました。

　個人的にはこの『アラスカ珍道中』がロードムーヴィー中のベストだと思います。金鉱の地図というマクガフィンがはっきりしているので、ストーリーの展開に無理がないですもん。ドロシィ・ラムーアとボブ・ホープのキスシーンも嬉しいプレゼントでありました。

　モノクロ・スタンダード、モノラル音声。前三作と同じく丁寧なレストアがされた高画質のＤＶＤ。英語字幕・クローズドキャプションつき。

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