She Demons (1958)

DVD Release Date: 8/14/2002


　『She Demons』、1958年の製作というと、リチャード・カンナ監督、同じ年に『She Demons』と『Giant From the Unknown』作っちゃったの（笑）。翌年にはあの忌まわしき『月へのミサイル』でしょ。ＤＶＤ買っておきながらこんなことをいうのもなんだけど、心の葛藤とか、そういうのなかったのでしょうか。

　冒頭、ごうごうとアメリカ沿岸部を吹き荒れるハリケーン。つまみ枝豆似のテレビレポーターが大変です、うちのカメラマンも飛んできた看板がぶつかって怪我をしましたなどとニュースで喋っております。そして、ニュースの終わりに彼は視聴者たちにこんな呼びかけをするのでした。「大金持ちのターナー氏の船が2日前の無線を最後に消息をたちました。船に乗っていたのはターナー氏の令嬢　ジェリーさん（アイリッシュ・マッカラ）、船長のフレッド・マクリン（トッド・グリフィン）氏、乗組員のサミー（ヴィクター・シン・ヤング）、クリス（チャールス・オプヌイ）の四人です。沿岸部にお住まいの皆さん、何か情報があれば、関係当局にお知らせくださるようお願いします」

　アイリッシュ・マッカラといったら、あれですわ、テレビシリーズ「ジャングルの王女　シーナ」の初代シーナですわ。またこんないやな下積み仕事をを（笑）。

　はい場面が変わってもう例の四人は太平洋上の海図には存在しないはずの島に漂着しております。抜群のスタイルと美貌を誇るジェリー、でもお金持ちのお嬢さんだから、「ああ、私のワードローブがないわ、キー、靴一足しかないじゃないの」と文句たらたら。命がけで荷物拾ってきた男性陣をいらつかせます。サミーは無線機で助けを呼ぼうとしますが、この島を空爆訓練の目標としているらしいジェット機の更新を傍受しただけでした。そして、なお悪いことに砂浜で不気味悪い足跡が見つかります。その足跡はなぜか、ダンスでもしているかのように、円を描いていたのです。しかも、足跡には野獣のような長い鍵爪が！ひっと叫んだポリネシア人のクリス。砂浜に膝まづいて一心に何かのお祈りをとなえはじめますな。「だんな、ここは邪悪の島ですだよ」

　いよいよ怪しくなってきたけれども、ジェリーはとりあえず洞窟の中にはいって寝ようということになります。ここで、サーヴィスカット、ワードローブの中に入っていたネグリジェがなくなってしまったので、この女、全裸で寝ようとするのですわ。なぜ全裸になるのか、ちと分かりかねますが、まあ、サーヴィスですから。そのとたん、どこからともなく聞こえてくる太鼓の音、どんどんどんが、どんどんどんが、彼らは夜明けを待って島を探検することになりました。

　クリスをキャンプの見張りに残して島の中央部に分け入ったジェリー・フレッド・サミー。白煙沸き立つ泉を見つけて、この島に火山があることを知るのでありました。そして、わざとらしく気に巻きついたニシキヘビが登場。蛇を一目みたジェリー、恐怖に動けなくなったところをフレッドに助けられます。キャッとか言ってフレッドにしがみつくジェリー。ちょっといいムードになりますな。

　このシーン、ＬＡのグリフィス公園でロケしています。火山活動で沸き立つ泉を撮影するために、ドライアイスを池に投げ込んだものだから、係員に大目玉くらったとか。

　キャンプに戻った三人はキャンプが荒らされ、無線機もばらばらにされていることをしって驚愕します。あろうことかクリスも二本の槍を胸に突き刺されて死んでいるではありませんか。さらに三人は近くの浜辺で女の死体を発見。うつぶせになっていたのをごろりとひっくり返してギャー、ナイスバディの女なのですが、顔が化け物、二本の鋭い牙が生えていて、まるで、爬虫類のようです。フレッドは叫びます。「こ、これはシー・デーモンだ！」彼らは危険を避けるためにジャングルへ潜むことにします。

　ジャングルをのんのんずいずいと歩く三人。そうするとまたどこからともなく太鼓の音が。どんどんどんが、どんどんどんが・・・。三人が木陰からそっとのぞき込むと、はい、いたいた、ジャングルビキニの女たちが太鼓の音に合わせて踊り狂っております。その奇妙なる光景に魅了される三人。僕はちっとも魅了されませんでしたけど。そして、驚くべきことが起りました。いきなりナチスの軍服を着た軍人がマシンガン構えてこの踊りに乱入してきたではありませんか。「ダス、ミツケタッテン、コノアマイヒト、ヤー、ヤー、コッチクルンスト！」このドイツ語を翻訳すると、「見つけたぞ、このアマ、こっちこんかい！」になるわけでして・・・。ナチス軍人は女たちを連れて洞窟へ消えていくのでありました。

　好奇心に駆られて行く先をつきとめようとするフレッド。洞窟の先には謎の研究所があり、ナチス軍人たちはその中庭の竹製の檻に、女たちを追い込むのでした。フレッド、一端退散して、サミーと、ジェリーを連れて戻ってきます。そして彼らの目の前で「イッヒニゲダス、コノアマイヒト、イタイテン、アワースン」このドイツ語を翻訳すると、「よくも、逃げ出したな、このアマ、痛い目に合わすぞ」になるわけでして・・・。でっぷりと太った別のナチ軍人、エゴルが一人の女を鎖で縛って、ばっちんばっちん鞭打つのです。がくりと頭を垂れる女。エゴル、カーッぺっと女に唾を吐きかける悪辣ぶり。ナチスはいかんですなー。

　一人の女が研究室の手術台にしばりつけられます。その傍らには顔を包帯で覆った謎の女性。科学者らしき人物が女と女性にチューブをつきさして、なにやら始めますな。おお、手術台に横たわった女の顔がみるみる変わって、ああ、あれは『She Demon』！いったいこの人たちは何者なのでしょうか。そして何の目的があって、このように恐ろしい実験をやっているのでしょうか。

　ナチ軍人達がいなくなったので、女を助けてやろうとする三人。しかし、女はすでに息絶えていました。それから彼らはナチスの基地に潜入、地下の研究室と思しき部屋を見つけて何か役にたつものがないかと物色します。ここで、急速に仲良くなるジェリーとフレッド。こんな敵の研究室に忍び込んでいるのに、その場でラブシーンをはじめやがるのです。「あとどれだけ生きられるか分からないけど、これだけはあなたに知って欲しかった。愛しているわ」「ジェリー」という訳でぶちゅぶちゅぶちゅちゅー。ルーカス、ここからぱくりましたな（笑）。

　一方、エゴル、女を縛り付けていた鎖が外れているのを見つけてぎょっ。侵入者だ！彼は基地の扉が開いているのに気づいて、たいまつ片手に侵入者を探し始めるのでした。研究室に入っていくエゴル、三人、思い思いの場所に隠れているのですが、丸見えなのに大笑い。おそらくたいまつの明かりが届く以外のところは真っ暗というつもりなのでしょうか、そのわりに画面が明るいので、ぜんぜん隠れているように見えないのです。一端は研究室を出ようとしたエゴル、ジェリーがうっかりフラスコを割ってしまったので、ようやく彼女を見つけることができたのでありました。

　「おやおやこんなところに、美しいフロイラインが」たちまちやにさがるエゴル。何がフロイラインだ、馬鹿。エゴルが彼女に気をとられている隙に、後ろに回って飛び掛るフレッド。どっちゃんがっちゃん、ここからしばらくくんずほぐれつの戦いですわ。研究室をめちゃくちゃにした挙句、エゴルとフレッドは外に飛び出します。そこでまたすったもんだがあって、ついに、フレッドはエゴルを今やすでにシー・モンスターと化している女たちの檻に叩きつけるのでした。がしゃあん、檻は壊れエゴルはわらわら出てきたシー・モンスターたちにずたずたにされてしまいます。そしてシーモンスターたちはジャングルの中へ逃げ出していくのでありました。一安心のフレッド・ジェリー、サミー、しかし、それもつかのま、彼らは数人のナチス軍人たちによって捕らえられてしまったのであります。

　三人はこのナチス軍団の首領、さっき出てきた科学者らしき人物、オスラー博士（ランドルフ・アンダース）の元へ連行されます。彼は第二次大戦中、“肉屋”と呼ばれ忌み嫌われていたナチスの科学者でありました。彼はこの島の地熱エネルギーを研究しているのだといいます。「溶岩だ、溶岩のパワーを利用することができれば世界を征服できる」温泉屋にでもなろうというんかいの。しかし彼の美しかった妻は溶岩の研究中に事故で顔にひどい火傷を負ってしまっていたのです。オスラー博士は他の島から調達してきた娘たちから、“キャラクターＸ”なる遺伝子成分を抽出、ええ、“ケミカルＸ”じゃないですよ。それを用いて、妻の顔面を修復しようとしていたのです。その代わりに、娘たちには動物から抽出した粗悪な“キャラクターＸ”を注入するのですが、これの副作用であんな怪奇なシー・デーモンになってしまったというわけ。時々、元の人間に戻ることもあるのだが、意識はもやは野獣と同じ。せっかく逃げながら、太鼓をどんがどんがやって踊り狂っているという無意味な行為も、粗悪な“キャラクターＸ”の副作用だったのであります。

　ここでようやくさっきの奇怪なる実験の意味がわかりました。ふう。

　さて、エゴルを殺した責任をとってもらおうとナチ軍団によってさんざんいたぶられるフレッドとサミー。しかし一方、ジェリーは博士の妻のものであるドレスを着せられていささか過剰に過ぎる接待を受けていました。博士はシャンペンを彼女にすすめて、「な、ええやろ、させんかい！」当然拒むジェリーですが、「させんかい、させんかい、させんというならシー・デーモンにしてまうぞ」この様子をオスラー夫人がドアの隙間から覗いているという・・・（笑）。ジェリー、悩むフリをして、シャンペンのビンを手にとり博士の頭を一撃！ばたりと昏倒する博士。ジェリーは急いで逃げ出すのでありました。

　そのジェリーを追うナチス軍団。しかし彼女に救いの手が差し伸べられました。突然現れたオスラー夫人です。彼女は檻のカギをジェリーに渡し、島の反対側にボートがあるからそれでお逃げなさいとアドヴァイスまでしてくれるのでありました。ここで、ジェリーは極めて図々しいお願い。「私の服を取ってきて」こんなこと頼むジェリーもジェリーですが、ちゃんと服持ってきてくれる妻も妻だ（笑）。二人を檻から出してさあ、逃げよう。あっさりとオスラー博士とナチ軍団に捕まってしまいました。

　怒り狂ったオスラー博士、有無を言わさずジェリーを手術台に縛り付けて、“キャラクターＸ”の注入準備を整えます。男二人は実験室の檻に叩き込んであるのでもうジャマはできないぞ！ふとジェリーの上にかがみこんで「どうだ、まだ間に合うぞ、ええやろ、させんかい！」オスラー博士、まだこんなこと言っているんです（笑）。首を振るジェリー。「そうか、しかたない。では、醜い醜いシー・デーモンになってしまえ」その時、最高のタイミングで飛来したアメリカの爆撃機部隊。爆撃訓練が始まったのです。どかーん、どかーん、揺れる実験室。そして、ぷしゅーっという音とともに、溶岩から熱を取り出しているパイプから蒸気が噴出。「わあ、やばい」バルブを閉めに走るオスラー博士。しかし、わりにあっさりと壁がべこりと壊れて流れ出してきた溶岩にのまれてしまいます。じゅじゅじゅじゅじゅじゅー。振動で壊れた檻から脱出したフレッドとサミー、彼らはジェリーを助けて、島から逃げ出そうとすします。ジェリー、オスラー夫人に向かって「あなたも逃げましょう」と誘うのですが、夫人は「私の居場所はここだけよ」はらはらと顔面の包帯を解き始めますな。ばーん、現れたのは骸骨化した醜い顔。彼女は自ら炎に包まれ始めた実験室に戻って夫と運命をともにしたのでした。

　三人は、首尾よく入手した拳銃でナチス軍団を射殺しまくりながら、逃げ回ります。ようやくオスラー夫人の言っていた島の反対側に到着。ボートも見つかりました。サミーがボートをとりにいっている間、フレッドとジュリーは崖の上で抱き合い、ぶちゅぶちゅぶちゅちゅー。不忍池公園にあるような頼りないボートで島から脱出する三人の姿で映画は終わります。

　しょうもない映画でした（笑）。この手の映画でありがちなんですけど、なんで、世界を征服しようというナチスの残党が4〜5人しかいないのか（笑）。ナチスの軍服をりゅうとして着こなしたオスラー博士のイヤミなキャラクターは捨てがたいのですが。

　モノクロ・スタンダード、モノラル。時々ばりばりというノイズが入ります。このノイズさえなければ、高品質といえる画質なのですが。音声は標準レベル。聞き取り易いですが、どうして、カンナ監督の映画はこう無駄に台詞が多いのか。イメージエンタティメントのＤＶＤ。

　Director: Richard E. Cunha
　Format: Black & White
　Rated: Unrated
　Studio: Image Entertainment
　DVD Release Date: August 14, 2002

ＳＦシネクラシックスへ戻る