Slugs スラッグス 1987
『スラッグス』（『Slugs 』1987）、人食いナメクジが人々を襲う、もうこれだけで、ストーリーがみんな分かってしまう映画です。それ以上でもそれ以下でもありません（笑）。原作者のショーン・ハトスン（一時、この人に嵌って、「ＤＥＡＴＨ ＤＡＹ」とかわざわざペーパーバックスで読んだなあ。あれもグログロだったなあ）は1987年の時点で35歳までに本物の金持ちになるのだと気炎を上げていたそうですが、さて、どうなったのか。
冒頭、ボートで釣りをしている若いカップル。んー、のんびりしているねえ、仲良きことは美しきことかなと思いきや、女の子の方は不満たらたら。「せっかくのデートなのに、釣りなんてやってられないわよ、泳ぎましょうよ」ぱっとズボンを脱いでパンツ丸見え（サーヴィスカット）。この女の子、やられるな、馬鹿だなと思っていたら釣りをしていた男の方が何者かによって水の中に引っ張り込まれてしまいます。「うひゃあああ」がぼがぼがぼ、水が怪しく騒いで定石通り下から湧き上がってくる血。「きゃああ」と女の子が悲鳴を上げたところでオープニングクレジット。
ほら、思ったとおりのオープニングでしょ？
ここは田舎町のマートン。深夜の道をふらふら歩いているのはアル中じいさんのロン・ベル（スタン・シュワルツ）であります。犬を連れた彼はポケットのウィスキーをくいくいやりながら自分の家へ到着。この時、ちらちらでかい蛞蝓が見えておりますな。彼は投げ込まれていた立ち退き勧告書を読んで「ふん、お、追い出せるものなら、追い出してみろってんだ、うーい」食いかけのピザが腐っていたので、それをゴミ箱代わりの地下室へどさっ（うぇー）。ソファーにばたりと倒れ込んだと思ったら凄まじい悲鳴。「ギャ−」彼はあっという間に何者かに食われてしまったのであります。
場面は変わって喧しいバーへ。ここで集まっているのが本作の主要登場人物たち。郡の衛生検査官マイク・ブラディ（マイケル・ガーフィールド）、その妻で高校の教師キム（キム・テリー）、やり手のビジネスマン、デヴィッド・ワトソン（エミリオ・リンダー）とその妻マリーン（アリシア・モロ）、市の下水課に勤めるダン・パーマー（フィリップ・マクヘル）とその妻マリア（コンカ・クエトス）、要するに彼らの紹介のような場面なのです。ここで、マリーンの飲酒癖が話題になるのですが、まったく物語には関わってこないのに苦笑させられます。帰宅したマイクとキム、早速に「夜の宿題をしましょう」、「はい、先生」なんちってベッドイン。寝室の窓にはりついた蛞蝓が二人の姿をじっと見ているという・・・。
翌朝、リース保安官（ジョン・バッタグリア）とともにロン・ベルの自宅へ向かうマイク。立ち退き執行をするのに、衛生検査官と保安官の組み合わせというのはおかしいのですが、原作ではちゃんとリース保安官が執行吏になっていますのでご安心を。彼らは荒れ果てたロン・ベル家へ入り込み、「うわあ、き、きったねえ、ゴミそのまんまじゃん」二人はあのソファーが置いてあるリビングに入り込んで「ぎゃ、こっちはもっと汚いぞ、げえ、たまらんなあ」とひとしきり騒いでからようやく「ギャ−っ、あ、あれはなんだ」ようやくロン・ベルの無残な遺体に気がつくのでありました。もっと早く気がつくだろ、フツー（笑）。
直ちに鑑識が呼ばれていろいろ調べるのですが、何が起こったのか、さっぱり分かりません。保安官の助手、ドブス（アンディ・アルサップ）は真っ青になって「保安官、内臓がないんですよう。本当に内臓がないぞう、なんですよう」などと口走り、保安官に「お前、帰れ！」と叱られたりしております。また部屋のあちこちに蛞蝓の這った後があり、皆をますます混乱させるのでした。町へ戻る車の中で保安官、「これは、野犬とか、アライグマとかの動物の仕業じゃないだろうか」しかし、マイク、考え込んで「そんなに大きな動物だったら家の中がもっとあらされる筈ですよ。ネズミとか小さな奴じゃないでしょうか」
オフィスに戻ったマイクを待ち構えていたのは市民の「下水からすんごい臭いがするんですけど」という苦情。やれやれとマイクは下水課のダンとともに調べることになりました。防護服に身を包んで下水に降りるダン。引っ掻き棒（なんて言うのか、ああいう道具）でパイプを探ってみると、うわあ、出るわ、出るわ、生ゴミ一杯。おまけに皮を剥かれたり、逆に内臓がなくなったりしているネズミの死骸までぼとぼとと。しまいには何者かが引っ掻き棒を引っ張り、ダンの手からもぎ取ってしまったのです。驚いたダン、ほうほうの態で下水から逃げ出したのでした。
まあ、なんぼなんぼ数いるからって一体どうやってナメクジが引っ掻き棒引っ張るんだか、教えて欲しいものですが。
マイクはキムを迎えに学校へ。半ドンでまだ午前中だというのに、授業が終るなりぶちゅぶちゅぶちゅちゅーとキスをする暑苦しいカップル、ボビー・タルボット（クリス・マン）、ドナ・モス（カリ・ローズ）がいるのに驚かされます（笑）。キムを見つけたマイクは「ハイ、ビューティフル、ハワユー」なーにがハイ、ビューティフルじゃ（笑）。昼飯を食うことになっていたのですが、あの事件の後でマイクに食欲があるわけもなく自宅へ直行。また放課後のパーラーではしゃぐティーンエージャーたち。「もうすぐハロウィーンパーティだね」その傍らではドナがやる気満々でボビーの耳のあたりをぺろぺろぺろり。ああ、うっとおしい。
ここで第二の犠牲者が発生。ガーデニングを趣味とするハロルド・モリス（ジュアン・マヤン）であります。彼は自宅の温室でさあ、今日も可愛い草花ちゃんたちの手入れをするべかなと手袋をはめて・・・、「ギャ−ッ」何者か、いや、もうはっきり言ってしまいましょう、あのロンを食ってしまった殺人蛞蝓が手袋に入り込んでいたのです。ぎゃーぎゃー喚きながら手袋を外そうとするハロルド、しかしどうしたことか外れません。ハロルドは奥さんのジーン（ルシア・パレド）に助けを求めますが、彼女は音楽を聞きながら掃除機をかけていたので、気がつかないのです。思い余ったハロルド、斧を手にとると、己の手首めがけてがつーん、ぷしゅーっ、血が飛び散ります。あああ。「ぎええええ」と悲鳴を上げながらもなおも斧を振り下ろすハロルド、すいません、ちょっと勘弁してもらえませんか。この騒ぎで棚から二つのビンが落ちてがちゃん、しゅー、中の液体が煙を上げ始めました。ようやく蛞蝓に噛まれた手を切り離すことに成功したハロルド、い、いてててて、ようやく駆けつけてきたジーン、「ああ、あなた、大変だわ」と叫んだところで煙を上げていた液体がぼっと発火、その火がなぜか温室の中に置いてあったガソリンの容器に引火してちゅどちゅどちゅどどどーん、温室が吹き飛んでしまいました。
確か、何かの害虫を殺すためにガソリンを使うと聞いたことがありますが、なにもポリ容器一杯のガソリンを温室に持ち込むこたぁない。
帰宅してキムからハロルドの事件を聞いたマイクはびっくり。「なんてことだ、いい人たちだったのに」そしてマイクは庭に蠢いている蛞蝓を見つけます。「なんだ、これは、こんな馬鹿でっかい蛞蝓は見たことないぞ」捕まえようとして手を伸ばすと、がぶっ、ああ、蛞蝓に噛まれちゃった（大爆笑）。仰天したマイクはその蛞蝓を捕まえて高校の生物教師、ジョン・フォーリー（サンティアゴ・アルバレツ）のところへ持ち込みます。「ジョン、蛞蝓ってのは何を食べるんだい」「そりゃ、野菜ですが」「肉食の奴ってのはいないのかねえ」ジョン、いきなりの問いに半信半疑の顔をするのですが、とにもかくにも調べてくれることになりました。
あの酔っ払い女のマリーン、買い物から帰るなり、早速酒をぐびぐび。買って来たレタスが不気味に動いているのも知らないで、そのまま寝込んでしまったマリーン、夫の車が戻ってきたのを知ってあわてて起き上がりお料理。レタスをそのまんまざくりざくりと切ってしまいます。彼女は帰宅した夫に「はーい、今夜はサラダよ」レタスぐらい洗うがよかろう、この馬鹿女。可哀相にデヴィッド、コマ切れにされた蛞蝓が入っているとも知らずにサラダを食べてしまったのであります。うぇえええ。
さて、あのバカップル、ボビーとドナ、ドナの両親が出かけた後の自宅でがっぷりがっぷりやっております。ドナ、「ああ、アイム・カミング・アズ・ユー・アー・ソーナイス！」うるせえよ。ボビー、ぱたりと動きを止めて『バッテリーを充電しなくちゃ』とジャックダニエルをごくごく。ああ、そうですか。定石通り、この二人を襲う殺人蛞蝓軍団。あっという間に二人は骨にされてしまいました。ハハハハ、暢気にセックスしているからそんな目に会うんだよ、ザマアミロっての（笑）。翌日、この酸鼻を極めた現場でマイクは保安官に「犯人は蛞蝓ですよ」と説明するのですが、当然ながら相手にされません。「ハハハハ、蛞蝓って、そんなお前、あの塩かけたら溶けちゃう奴か」「だったらどの現場にも残されている蛞蝓の這った跡はどう説明するんです」保安官はぎろりと彼を睨んで「そんなにナメクジこわけりゃ、塩持って歩きな」
マイクはぷんぷん怒りながらオフィスへ戻るのですが、そのとたんにダンから呼び出し。下水課の事務所へ行ってみると、ダンが真っ青な顔で「マイク、下水のあちこちで猫・犬・ハト・ネズミの死骸が見つかっているんだ、一体この町に何が起こっているんだ」マイクは今までのことをダンに説明します。「なに、蛞蝓って、そんなお前、あの塩かけたら溶けちゃう奴か、そんな馬鹿な」いぶかしがるダンでしたが、何しろ死骸の件があるので信じざるを得ません。それから二人は下水配管図を見て、地下で何が起こっているのか突き止めようとします。「そう言えば」ダンが何かを思い出したようです。「20年ほど前、有毒な産業廃棄物が投棄されたことがあったっけ、それが下水に流れ込んで」ようやく話が分かってきました。
馬鹿女に蛞蝓入りサラダを食べさせられたデヴィッド、ずきんずきんと痛む頭を抱えてレストランで商談中。見事商談が成立します。大喜びのデヴィッド、顧客と三人で乾杯しようとしますが、ああ、鼻血がドバー、後から後から流れでてきます。あまりの苦痛に立ち上がったデヴィッドは「ぴいいいい」と怪奇な悲鳴を上げてばったり。その顔面や眼球を突き破って、おお、寄生虫があふれ出てきたではありませんか。だから、勘弁してくださいって。マイクは「うちの料理は大丈夫ですって、食中毒なんかじゃないですって」と喚くレストランの主人を説得して、デヴィッドが食べていた料理の一部と彼の血液サンプルをジョンの所へ持ち込みます。その結果、発見されたのが、蛞蝓が媒介すると思われる寄生虫。蛞蝓の害は人を食うだけではなかったのです。マイクは「下水が蛞蝓たちの繁殖場になっているのだ、なんとかしないと」と焦りを募らせるのでした。
蛞蝓はマイクの家にも現れます。キムが蛇口をひねると蛞蝓がみょろーん。あ、糸が見えた（笑）。マイクはフライパンで蛞蝓をぱんぱんつぶし、彼女を一時義母の家に避難させることにします。マイクは水道局のフィリップス（フランク・ブラナ）と面談して、これ以上の蛞蝓の蔓延を防ぐために水道を止めろと申し入れるのですが、相手にされません。マイクはさらに市長に直接申し入れるのですが、こちらでも門前払い。マイクは自分達でなんとかしなけりゃと決意するのでありました。あ、忘れていましたが、水道局のフィリップス、マイクを追い出した後、トイレから現れた蛞蝓に食われちゃってます（笑）。
ここから、マイク、ダン、ジョンの大活躍。まず、ジョンが水分と反応して発火する薬（原作ではリチウム）を作ります。そうしてこの薬を三人で下水に流し込んで蛞蝓どもを退治しようという訳。かといって、適当に流し込めばいいってもんじゃありません。下水網のどこかにある蛞蝓どもの繁殖場を見つけなければならないのです。ダンと、マイクは決死の覚悟で下水に入ることになります。「俺は君と子供達のために行くのだ」マリアに向かって口にはださねどもそれとなく別れを告げるダン。「もし帰ってきたらソッコーやりまくろうな」（本当にこんなことを言っている）。
三人は下水課のタンク車（普段は一体何に使っているのでしょう）に例の薬品を満載し、出発します。そして、防護服に身を固めて下水へと降りるマイクとダン。暗い下水の中を進む二人、ちらちら現れる蛞蝓。時にハロウィーンパーティの夜。浮かれたティーンエージャどもが野外で酒をがぶがぶ飲んでパーティなんかやろうとしております。ボーイフレンドと出かけたパム、危うくヤラレそうになって（笑）「そんなことをするあなたは嫌いよ」と逃げ出しました。そこを狙ったのが、あのボビーとつるんでいた不良少年（名前は知らない）、彼は骸骨のマスクを被って夜道を歩くパムに襲い掛かります。「おらあ、させんかい、ぱんぱん言わせたるでぇ」なんとか逃げだしたパムですが、運悪く下水に落ちてしまいます。あとは蛞蝓が現れてはい、それまでよ。
一方、下水を進むダンとマイク。ばいーん、彼らの前に現れた蛞蝓の大群。ダンは「よし、ここに薬を流し込もう」しかしマイクは「いや、ここは繁殖場所じゃないぞ」目の前に使ってくださいとばかりに垂れている電線をライターの炎で虻って切断、「そおれ電気責めじゃあ」びびびびび、蛞蝓感電します。でもさあ、ここ下水の中なんだからさあ、周り全部濡れているよね、こんなことしたら当然マイクもダンも感電するよね（笑）。
そしてようやく二人は蛞蝓の繁殖場所を見つけ出します。そこは円筒形の部屋となっており、地上へ出るための梯子が反対側にあるという不思議な場所。この真中に深いプールがあって、この中で無数の蛞蝓が繁殖しております。二人は無線で地上のジョンに連絡。場所を教えて薬の準備をするように伝えます。ジョン、タンク車を教えられた古い工場の側、に移動してマンホールを開けようとするのですがこれが開かないの（笑）。さんざん苦労していると何時の間にか保安官が来ていて、「お前、なにやってんの」ジョン、大ピーンチ。
地下の二人はなんとかプールの中の蛞蝓をやり過ごして梯子に取り付こうとするのですがこれが上手く行きません。わざわざ持ってきた生肉をおとり代わりに撒いてみても効果なし。そのうち、誤まってダンがプールの中に落っこちてしまいました。「ギャ−」たちまち無数の蛞蝓にたかられ、血まみれとなるダン。「待ってろ､ダン、俺が助けてやる」マイクは頭上を走っているパイプにぱっと飛びついてダンを助けようとするのですが、すでに手遅れ。ダンはぶくぶくと沈んでしまいました。唇を噛み締めたマイク、そのままパイプを伝って梯子へ。これをするする登って地上へって、何で最初っからそうしないの（笑）。
マンホールから出たマイク、保安官がいることに気づいて驚きますが、どうやら保安官すっかり改心した様子。マンホール開けを手伝ったのも保安官だったのです。「とりあえず話は後だ」マイクとジョンはタンク車からのホースをマンホールにつっこむとバルブ全開。薬を下水に流し込みます。たちまち起る大爆発、ちゅどーん、吹っ飛ぶマンホールの蓋、ちゅどどーん、粉々になる店舗、ちゅどどどーん、爆発する車輌、ちゅどどどどーん、ハロウィンパーティのど真ん中でマンホールが爆発、逃げ惑うティーンエージャー達。うわあ、『美女と液体人間』のラストよりムチャや（笑）。
キムが駆けつけてきて、「ああ、あなた」マイクと抱き合ってぶちゅぶちゅぶちゅちゅーとキス、エンドマークと思いきや、カメラはたった一匹生き残った蛞蝓を映し出します。不気味に触角を振り動かす蛞蝓。今度こそエンドマーク。
原作では近親交配なんかで何時の間にか人食い蛞蝓が生まれていたというテキト−さだったのですが、この映画ではちゃんと産業廃棄物という設定があって蛞蝓発生のメカニズムが分かりやすくなっております。特撮もなかなか良く出来ていて、うん、こういう映画なら文句無し。
カラー・スクイ−ズのワイド収録。モノラル音声。画質は非常にキレイ。その分、蛞蝓のぬらぬらが良くわかってキモチ悪い。音質も良く聞き取りが非常にラクでした。アンカー・ベイのDVD。
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