『THE INVISIBLE WOMAN』（1940年）

　THE INVISIBLE WOMAN　1940

　『透明人間』シリーズも回を重ねまして、今度はおきゃんなOLが透明人間になるという・・・、しかも、ミョウチキリンなコメディ仕立てでむむ、早くも行き詰まったかと思わされる珍作。それなりに楽しいのではありますが。

　警告、警告、このＤＶＤのリージョンは1です。したがって日本国内のＤＶＤプレーヤーでは再生できません。警告、警告。

　ここは大富豪リチャード・ラッセル（ジョン・ハワード）のお屋敷。執事のジョージ（チャ－ルス・ルグルス）はご主人さまに新聞を持っていこうとするのですが、昨夜のご乱行の後らしい転がった酒壜を踏んづけて階段から転げ落ちてしまいます。「なんだ、なんだ、うるさいな」と顔を顰めるラッセルにジョージは新聞見せて「ショーガールにちょっかいかけて10万ドル払わされたそうですな！もうあなたは破産ですぞ」愕然とするラッセル。居間のピアノのうえに今まで関係した女の写真がところせましと並べてあるというギャグがあって、ラッセルがお金にも下半身にもいささかだらしのないプレイボーイであることが分かります。

　「もうお金がないのか、こまったなあ」もうひとつおまけに心配事。実はこのラッセルの家、父親の代からお抱え発明家、ギブス教授（ジョン・バリモア）に援助しておりまして、屋敷のすぐそばに研究室をたててやっていたのです。「教授から研究費3,000ドル追加してくださいっていわれたけど、駄目になっちゃったぞ」この知らせは家政婦のジャクソン夫人（マーガレット・ハミルトン　『オズの魔法使』の悪い魔法使いで有名ですな）を通じて教授に知らさせるのでした。教授はあわてて、「こりゃ、急いで広告を変更しなけりゃ」ギブス教授、車で町にでて広告店へ飛び込みます。彼はそこで「勇敢なる冒険者求む。透明志願者、謝礼3,000ドル」と出していたのを「透明志願者　謝礼なし」に変更。どっちにしてもあんまり変わらないような気がしますが（笑）。

　研究室へ戻った教授、ラッセルを呼んできて、「喜んでください。わしは長年の研究の結果、ついに人間を透明化する技術を発明したのです。これで莫大な利益があなたのもとに転がり込みますよ」喜んだラッセル、屋敷を立ち退くために荷造りをしていたジョージに向かって「すまないけど、みーんな荷物元にもどしてくれるかい」ジョージ、憮然とします。

　さて、こんな広告でも応募してくる人がいるのですなあ。その名はキティ・キャロル（ヴァージニア・ブルース）、コンチネンタル・ドレス社にモデルとして勤めている女性でした。彼女は雇い主グローリィ氏（チャ－ルス・レーン）の横暴な振る舞いにハゲシク怒っておりまして、透明になって彼に復讐してやろうと考えていたのであります。彼女はギブス教授から届いた採用の通知に大喜び。「私が透明になったら」などという歌を歌いつつ会社に向かうのでありました。しかし浮かれすぎて二分の遅刻、さっそくグローリィ氏から「時給1時間カット」を申し渡されてしまいます。さらにグローリィ氏風邪気味のほかのモデルさんに向かって「いいこと、お客様の前でくしゃみなんかしたらクビですよ、クビ！」なるほど確かにこれは酷い（笑）。

　お客の前で最新のドレスのモデルとなるキャロルたち。心無いお客様が「あれ、この布は薄いわねえ」ひっぱったものだからビリっ！するとグローリィ氏が飛んできて口から唾を飛ばしつつ「あらあらあなたなんてことやってんのこのドレスいくらすると思っているのまったく近頃の若い娘ときたらなにお客様がひっぱったのですってまーあなたお客様のせいにするつもりお客様は神様ですよ三波春夫もいっているでしょまったくほんとうにどうしようもないんだから」あまりのことにキャロル、“切れて”しまいました。「透明になったら覚えていらっしゃい」と変わった捨て台詞を残して帰っちゃいましたとさ。

　キャロル、その足でギブス教授の研究所へ。てっきり応募者は男性とばかり思っていた教授はびっくりしますが、ジャクソン夫人を立会いさせて実験開始。まずキャロルについたての向こうで服を脱いでもらい、裸になったところで透明促進薬を注射。そして、妙に大げさな透明化マシーンを作動させるのでした。ばりばりばり、定石通り電気のスパークが飛び散ってチーン、はい出来上がり。キャロル、見事透明となったのです。大成功だと大喜びをする教授、「よーし、ラッセルを呼んでこよう」しかし残されたキャロル、ジャクソン夫人が止めるのも聞かずに「ほほほほほ、グローリィ待ってなさい」と叫んで逃げ出してしまいます。ラッセルをつれて戻ってきた教授、「キャロル、キャロルどこだい」返事がありません。「はて、もしや透明化の悪影響で気絶して床に倒れているのかな」ごそごそ床をはいまわりはじめる教授。ラッセル呆れて物も言えません。教授はなおも床の上をはいずりつつ、「キティ（kitty）、キティ、キティ、どこだい」すると子猫（kitty）が寄ってきてニャ－「お前じゃない」と払いのけるギャグあり。ラッセル怒って帰ってしまいました。

　透明となったキャロル、コンチネンタルドレス社に乗り込んでやりたい放題です。ドレスを着てお客様の前に現れ「ぎゃっ、ドレスが歩いてくる！」と死ぬほど驚かすわ、控え室の備品を残らず叩き壊すわ、グローリィ氏の頭を窓枠で挟んでおいてからけつっぺたに蹴りを何発も入れるわ、遅刻、時給カットの象徴、タイムレコーダーをぶっ壊すわ、今までの鬱憤をいっぺんに晴らすかのよう。さんざんに暴れてようやく満足したキャロル、また教授の研究室に戻ってくるのでありました。

　ここで新たな登場人物。ギャングの三下、フォグホーン（ドナルド・マクブライド）、フランキー・ハマーヘッド（シェンプ・ホワード）、あと一人（名前なし）のトリオであります。彼らはメキシコにいるボス、ブラッキー・コール（オスカー・ホモルカ）のために透明技術を手に入れようとしていたのであります。このブラッキー、メキシコに潜伏中なのですが、アメリカに帰りたい、ホームシックになっちゃったようと毎日泣いているという・・・。そこで透明になって官憲の目を欺いてアメリカに戻ろうとしていたのですな。

　三人は広告代理店の係員を脅して教授の住所を聞き出し、早速向かったのでありました。そして三人のうち、フォグホーンがメキシコからきたハードウィックスペンサーという人物に扮して教授をメキシコに誘い出そうとするのです。「教授、あなたは素晴らしい科学者ですから当地ではあなたを大歓迎しますぞ、あなたは英雄ですぞ」しかし、こっそりと三人の様子を見ていた透明のキャロルがふいに「教授、騙されちゃだめよ、この人たち銃を持っているわ」ギャングたち、いきなり誰もいないところから声が聞こえたので仰天しますね。「この人たちギャングよ、羊の皮を被った狼って奴よ」ギャングたち、たまらず逃げ出します。

　さてこの後、薬と機械の効用が切れてキャロル、再び見えるようになります。しかしギブス教授、キャロルに再び透明になってラッセルに実験成功の証明をしてくれと頼むのでした。「分かったわ」キャロル、頷いてグローリィ氏に電話。「あのー、私明日お休み頂きたいのですが」以前ならばグローリィ氏、ヒステリックに「駄目よ駄目よ休むなんてそんなに休みたかったら永久にやすませるわよ」と喚くところなのですが、あの騒動以来心を入れ替えたようで「そう、分かったわ、ゆっくりしていらっしゃい。なんだったら週末まで休む？」てな具合で妙にやさしくなっているのです（笑）。これでOK、教授とキャロル、ラッセルとジョージが滞在している湖畔のロッジに向かうのでありました。

　すでに透明となっているキャロル、服を脱いで教授の後からロッジへ入り込みます。しかし山の寒気はきびしく、裸のキャロル、さかんにクシャミをするのでした。教授、必死に自分もクシャミしてごまかそうとします。あいにくラッセルは釣に出かけており、一人残っていたジョージはやたらにクシャミをする教授に怪訝な顔。さらにキャロル、体を温めるために、ブランデーをグラスについでぐい。ジョージ、空中に浮かび上がったグラスをみて「ギャ－ッ幽霊だ」ようやく戻ってきたラッセル、この騒動で教授の透明化技術が本物だったことをとうとう理解するのであります。　しかしキャロル、教授が止めるのも聞かずに酒をどんどん飲んだので酔っ払ってしまって、もうめちゃくちゃ。「ういー、あたしはねえ、透明なのよ、透明ったらねえ、見えないのよ、ほほほほ、ひっく」ラッセルに向かって「うふふ、見たわよう、あなた大変なプレイボーイですってね」彼とちょっといい雰囲気になるのですが、さらに酔いが進んで「ああ、目が回るわ、頭がいたいわ、うう吐きそう」とうとうベッドに押し込まれてしまいました。

　一方、教授の研究室に忍び込んだのはギャングトリオのフォグフォーンたち。彼らはジャクソン夫人を戸棚に押し込め、透明化装置を分解してトラックに積み込みメキシコのブラッキーのアジトへ運びこんでしまったのであります。

　翌朝、大二日酔いで目を覚ますキャロル。「あ、あたたた、頭がいたい、むかつく、うう」彼女はもうろうとしながら鏡を見て「ギャ－ッ、まだ透明のままだわ！」いっぺんで目が覚めた（笑）。どうやら多量に摂取したアルコールの作用で予想以上に透明効果が持続しているようなのです。ギブス教授、「だから酒を飲みすぎるなといっただろう」と渋い顔。急いで実験室へ戻り、教授が作ったアルコール分解薬を注射することになりました。しかし戻った一行はびっくり。実験室ががちゃがちゃに荒らされて透明化装置が盗まれていたからです。しかし教授はにやりとして、「肝心なのは透明化薬さ、あれなしで機械を使ったらトンデモないことになる」

　この時、まさにブラッキー一味が組み立てた機械を試そうとしていたという・・・。どうも悪のボスというものはわがままでして、ブラッキーは最初の実験台にフォグフォーンを指名。「そんな透明になるなんて、女と透明人間にだけは気をつけろというのが先祖代々の家訓なんですが」どんな家訓なんだ、それはと冷たくツッコまれてむりやり装置に押し込まれてしまいます。ブラッキーのお抱え科学者フェルナンデスがスィッチをオン。またびーびーびりびりスパークが走って、フォグフォーンの姿が・・・、そのまんまです（笑）。フォグフォーン、透明になるかわりに声が女性のような甲高い声になってしまっていました。教授の言っていた「トンデモないこと」とはこれだったのですね。ああ、つまらない（笑）。

　さて、キャロル、教授のアルコール分解薬を注射されてようやく元に戻るのでした。大喜びのキャロルでしたが、ここでまたギャングたちが出現。教授と彼女をサラってしまったのであります。そのことを知って呆然とするラッセルとジョージでしたが、ここに現れたのがフォグフォーン、ボスのわがままによって声を変えられてしまった彼が怒って裏切ったというわけですね。彼はラッセルとジョージに向かって甲高い声で「キョ－ジュトキャロルサンハメキシコニツレテイカレマシタ」って場所まで喋っちゃう。「よし、メキシコだ、急げ」とラッセルたちは車を飛ばしたのであります。

　一方、アジトに連行された教授とキャロル、ブラッキーに「透明化の秘密を教えるのだ」と迫られます。キャロルは一計を案じ、実験テーブルの上に置いてあった薬用アルコールをがぶがぶ。それ、メチルじゃねえの、目ェ潰れても知らないよ。アルコールの作用でみるみる透明になるキャロル、服をばっと脱ぎ捨てギャングたちに襲い掛かったのでありました。ハンマーを振り上げて当るをさいわいぼかりぼかり次々と殴り倒していきます。この時追っかけてきたラッセル達が到着、さらに大騒ぎ。フォグフォーンはブラッキーと取っ組み合っているうちに、「こらてめえフォグフォーン　コラバカヤロナニスルカ」「ボスヨクモ実験台ニシやがって、この恨みはらさでおくべきか、あ、あれ」とお互いの声が入れ替わったりしておりますな（笑）。

　ギャングをみんなやっつけてようやく事件は解決。キャロルとラッセルは結婚して目出度し、目出度し。数年後に玉のような赤ちゃんが生まれます。その赤ん坊をジョージがローションでマッサージしていると、あれ、みるみるうちに透明になってみんなびっくり。壜のラベルにアルコール入りと書いてあったというオチで映画は終わります。

　なにか世界が急にセコくなったみたいで、これじゃクロード・レインズ泣くんじゃないか（笑）。

　モノクロ・スタンダード、モノラル音声。前の二作には劣るものの、これもなかなか立派なクオリティ。こんなDVDなら私は10万枚も買いたい（買わないけど）。英語字幕つき。Invisible Man - The Legacy Collection (透明人間/Invisible Man Returns/Invisible Agent/Invisible Woman/Invisible Man's Revenge)のセット。UmvdのDVD。

　ＳＦシネクラシックスへ戻る