Teenage Monster　Meteor Monster 　(1957)
　　　　　10代の陰獣

　


　今回のＤＶＤは1957年製作の『10代の陰獣』、なんだか江戸川乱歩の小説にでもありそうな邦題ですが、原題は『ティーンエイジモンスター』、『メテオモンスター』とも呼ばれており、ややこしい。特にこれを買ったアマゾン・コム、ＤＶＤのタイトルは『ティーンエイジモンスター』なのに、在庫リストには『メテオモンスター』でのせてやがります。

　1880年、いまだ、ゴールドラッシュの余韻にひたっている西部のある町、ジム・キャノン（ジム・マックロウ・シニア）は「今はしがねえ山小屋暮しだが、誓って金を見っけて、楽させたるぞ、母ちゃん、息子」と手につばをして鉱山に出かけて行きます。その後をちょろちょろついていく、息子のチャーリィ（スティーブン・パーカー）。残されたママのルース（アン・ジニー）が朝食の後片付けをしたりなんかしていますと、突如、空に煌く花火、じゃなかった、巨大な隕石。それは鉱山めがけてまっしぐら、ちゅどちゅどちゅどどどーん。あわててかけ付けたルースが見つけたのは無残な死体となったジムと生きていたものの顔に大きな傷（画面でみるかぎり、単なる汚れにしかみえない）をおったチャーリィでありました。「ギャー」ルースは絶叫します。

　それから七年後、あの隕石の影響でチャーリィ（ギル・パーキンス）は言葉も満足にしゃべれない、ウスラでかいモンスターへと成り果ててしまっていました。メーキャップのせいもあるのだろうけど、見事なおっさん顔、ぜんぜんティーンエージャーじゃないじゃん。これが大人しければなんてことはないのですが、もう大変な乱暴者で、通りがかった馬車の御者をいきなり撲殺。死体を見付けたママにこっぴどく怒られてしょぼん。そうこうするうちに、ようやく7年ごしの夢が適って鉱山で金を発見する、ルースとチャーリィ。そのお金で町外れの大きな家を買ってさっそくに移り住むのでした。

　町の近辺に住んだことで前々からお互い憎からず思っていたルースと保安官のボブ・ラーマン（スチュワート・ウェイド）の仲が急速に発展、「ママをとられる」いっちょ前にこんなことを考えたチャーリィは、いらつくあまりママとの約束を破って外に飛び出し、男をまた撲殺し、第二次性徴まっさかりの性欲そのままに、たまたまであったキャシー・ノース（グロリア・カステロ）、という可愛らしいウェイトレスを家に連れ返って監禁してしまいます。

　フツーならこの多感な時期の男の子は「おちんちんから白いモノが出てきました、これは病気でしょうか？」「40歳の女の人とつきあっていマス。なんでつきアウのかって、それはー、肛門トカー舐めてくれるカラー」とラジオの電話相談室に相談したりするのでしょうが、あいにく、ここは19世紀の西部、そんなもの、ありゃしません。事件を聞いて急ぎ帰宅したルース、チャーリーの部屋で気絶していたキャシーを見つけて仰天たまげます。いっぽう町の人々は得体の知れぬ化け物が徘徊しているという事実に怯えきっていました。

　息子可愛さのあまり、ルースはキャシーに500ドルの金を渡して因果を含めようとします。さらに毎日家にきて、チャーリーの相手をしてくれれば毎月500ドルのサラリーをだすわと提案。ずるそうな顔で承知するキャシー。ほくほくしていたキャシーでしたが、ボーイフレンドとは名ばかりのヒモに500ドル全部取られてぷっつん、チャーリーをだまくらかして、まんまとヒモを撲殺させてしまいます。うわ、この女可愛らしい顔してやることえっぐいわ。女ってみんなこうなのかしら。

　そして、事件に気づいたルースをも、「ほほほ、あの化け物があなたの息子と知ったら町の人はなんていうでしょうね、ほほほ」と脅迫。それどころかウェイトレスなんて最下層の生活には飽き飽きしていたというキャシーはルースに財産の一部を彼女に譲るという書類にサインをさせるのでした。あまりの悪辣ぶりに私の睾丸が縮みあがる！しゅっしゅっしゅー（睾丸の縮む音）。

　救いを求めるかのように、ボブとの関係を深めて行くルース。キャシーはそんな二人をみてますますいらつくチャーリーの耳に「ほーら、今にあの保安官があなたのパパになっちまうわ、そうしたら、ママだってあなたのことを邪魔だと思うに違いないわ、チャーリー、早いところ二人とも殺しちゃいなさい」でも、チャーリーはやっぱりママが好きでした。耐えきれなくくなったチャーリーはキャシーをぼくぼく殴って引っつかむと崖の上からポイしてしまいます。しかし追ってきたボブとその助手によって射殺されるチャーリー。ついて来ていたルースの「ああ、私の坊や」という叫びが荒野に虚しくひびいたのでありました・・・。ジ・エンド。

　どんな馬鹿映画だと思っていたら、なに、どうして、面白い映画ではないですか、息子かわいさのあまり、彼の存在をひたかくしにするルース、そして、搾取されるばかりの身分から、この思わぬチャンスをつかんで這い上がろうとしたキャシー、この二人の思惑が絶妙に絡んで見事なサスペンスをつくりあげています。とにかく、可愛い顔してても、女は怖いぞえ、迂闊に近づくことなかれという啓示に満ちた良作でありますな。

　モノクロ・スタンダード、ドルビーデジタルモノ。オープニングからいきなり画面がうわんうわん揺れるので、またカスをつかんだのかと思いましたが、それだけで、まあ普通の画質です。イメージエンタティメントのＤＶＤなので、例によって紙ケース、海苔弁式フタ。

ＳＦシネクラシックスへ戻る