The Beach Girls and the Monster (1995)
　　ビキニの悲鳴/原子怪獣の襲来

　『THE BEACH GIRLS AND THE MONSTER』、この忌まわしき映画はＡＩＰのビーチパーティムーヴィーの開祖であります。映画そのものもとんちきなのですが、ウェスタンコスチュームから借りたモンスタースーツの頭を盗まれてしまい、急遽、マーク役のウォーカー・エドミッソンが自分ちの台所で頭を作ったという、脱力度満点の好エピソードも伝わっています。これこそ、Ｂ級、エクスプロイテーション映画の鏡でありますな。

　冒頭いきなり鳴り響くロックンロールサウンド、ビキニの女達がえんえん踊り狂うという大変カシコイオープニングの後、フロリダの浜辺ではしゃぐ青年たち。主人公のリチャード・リンジｰ（アーノルド・レッシング）はガールフレンドのバニー（グロリア・ニール）といちゃいちゃ。

　バニー、リチャードに渡すお弁当のホットドックに隠し味と称して、砂をまぶしたりするもんだから、リチャード激怒。バニーに馬乗りになって、自慢のナックルパンチの雨、霰。がこがこがこがこ・・・、「この売女が、砂を砂を」がこがこがこ・・・。「じゃりじゃりだ、ああ、じゃりじゃりだ、」がこがこがこ・・・。顔面をぼこぼこにされた上に歯を四本へし折られたバニーは悲鳴をあげて逃げ出します。そこに現れたのは尖がり頭でつぶらな瞳、体中からワカメたらした、ビーチモンスターだ！アハハハハ。モンスターは何のタメもなくバニーに掴みかかり、情け容赦なく殺します。だから、バニー、死んでるんだから息をするな！浜辺は大騒ぎになり、駆けつけた警察官は異様な足跡が海に続いているのを発見して、戦慄するのでありました。

　リチャードのパパで、海洋生物学研究所の所長、オットー・リンジｰ博士（ジョン・ホール）に意見を拝聴する警察官。「これは放射能によって突然変異した魚の仕業かもしれないな」、あんた本当に海洋生物学者か！ところかわって、ここはオットー・リンジｰ博士の豪勢な別荘、ホームバーでとげのある言葉をぶつけあう、リチャードと継母のヴィッキー（エレーン・デュポット）、帰宅したオットーが二人を宥めるが、まったく効果なし。まったくもって不必要に殺伐とした家庭であります。そこに登場する管理人で彫刻家のマーク（ウォーカー・エドミッソン）、リチャードは彼と自室で秘蔵のハワイのサーフィンフィルムに見入るのでした。なんか、私、こんな映画見せられて馬鹿みたいですね。

　リチャードはもう一人のガールフレンド、ジェーン（スー・ケーシィ）と別荘のプールで泳ぐことにします。なぜならジェーンが殺人鬼がいるかもしれない海岸で泳ぐのはいやとだだをこねたからなのです、畜生！そんな二人を皮肉な目で見るヴィッキー。ヴィッキーは臆病な二人に当てつけるように、海岸で泳ぐのでした。そこに再び現れたビーチ・モンスター！でも彼女が帰り支度を始めたのであっさりと諦めるあたり、なんかへん。一方、プールでキャキャー言いながら泳ぐリチャードとジェーン。二人はマークに一緒に泳ごうと誘うが、マークは自分の足が不自由だからといって断ります。実は、この傷、リチャードの車に同乗していた時の事故によるもので、それ以来マークは引きこもりがちになっていたのです。

　マークは海岸から帰ってきたヴィッキーをモデルにして、粘土の彫像づくりを始めます。そんな彼を誘う、おまたの緩い女、ヴィッキー。マーク、びんびんとその気になりますが、ヴィッキーはキスしか許さず、「あんたなんかにそれ以上やらせるもんですか！」と出て行ってしまいました。おのれの肉欲の高ぶりを抑えきれぬマーク、きききとウメキながら、ヴィッキーの彫像を破壊するのでありました。コノウラミハラサデオクベキカ・・・。

　ヴィッキー、オットーに対しても「あなたは研究ばかりで、私のことを構ってくれなかったじゃない、ふん」という態度で、浮気相手にラブラブ電話を掛ける始末。親子電話でその会話を盗み聞きしていたオットーは、嫉妬の炎に身を焦がし、狂さんばかり。また、息子のリチャードはリチャードで、てっきり、自分の跡をついでくれると思っていたのに、「パパ、僕はもう海洋生物学なんて勉強したくないよ、僕はもっとサーフィンしたいんだ、へれへれと遊んでいたいんだ」彼は彼なりにマークに対する責任を感じているらしいのですが、オットーには総領の甚六のわがままとしか思えません。ますますいらつくオットー。

　リチャードは能天気に仲間たちと夜の浜辺でゴーゴーパーティに打ち興じます。テープレコーダーのサーフィン音楽でひとしきり、踊ったあと、ジェーンが「ねえ、リチャード、あの曲を弾いてよ！」リチャードはギターをかき鳴らし自慢の喉を披露するのでありました。ロマンチックなムードになりあちらこちらで、ぶちゅぶちゅぶちゅちゅーとキスするカップルたち。乱交寸前です。こんな奴らを取り締まらないで、当局はいったい何をやっているのか！そんな中、興奮した一組のカップルが野外セックスを楽しもうとして、岩陰に潜り込んだところにまた、現れたビーチモンスター、モンスターの鍵爪がカップルに迫る・・・、これっきり、このカップルは映画に登場しません、なんじゃ、こりゃ。

　さっきのカップルはどうなったのか、首を捻っている私をあざ笑うかのように、ビーチモンスターは仲間の一人、トム（ディル・ディビス）を襲います。どて、ぽき、ぐしゃ、殺された！そこに偶然とおり掛かったマークがトムを助けようとしますが、逆に殺人犯と間違われてしまいます。足の悪いマークが屈強な若者を殺せるか、考えてみれば分かりそうなものですが、無能な警察官たちはトムを逮捕しようとするのでした。これはかなわんとパトカーを奪って逃走するマーク。

　リチャードとジェーンは怪物の捜索に乗り出します。大きな排水パイプの中を懐中電灯片手に進むリチャード、にゃー！びっくりしますが、ただの猫でした。結局この二人の捜索、何の役にも立たないんです。

　さて、浮気相手の車に送ってもらって別荘に戻ってきたヴィッキー、べろんべろんに酔っ払っているところに、また現れるビーチ・モンスター、がり、ぐさ、どす、殺された！続いてマークが別荘に戻ってきます。彼は施錠されたクローゼットから怪物のゴム仮面を発見して、愕然、誰が、こんな・・・。呆然としている彼に襲い掛かるビーチ・モンスター！マークが苦し紛れに怪物のマスクを毟り取ると現れたのはなんと、オットーの顔でありました。オットーは、新妻の浮気、言うことを聞かない道楽息子、のせいで、ストレスがたまり、発狂してしまったのです（笑）。サーファー野郎を殺せばリチャードも真面目になってくれる、そんな身もフタもないことを考えていたのです。

　マークを殺して顔面を露出したまま逃げ出すオットー。リチャードとジェーンは警察に通報し、車で逃げるオットーをパトカーに同乗して追跡します。めりはりのないだらだらとした追跡劇があって、ついに運転を誤り崖からダイブするオットー、燃え盛る車にオーヴァーラップするＴＨＥ　ＥＮＤの文字。あー、やっと終わった。余韻もへったくれもない無茶苦茶な終わり方ですが、このどうしようもない映画にはお似合いですよ。

　オットーの別荘とプールははプロデューサー、エドワード・ジャニスの不運友人がビバリーヒルズに所有していたものを借りて撮影、内装は、ジョン・ホールのサンタモニカビーチの自宅を利用したそうです。だからどうしたって言われるかもしれませんが。

　モノクロ、シネスコ・スクイーズ収録。モノラル音声。画質は無駄に良いです。スクイーズだから、解像度が高く、ジョン・ホールの暑苦しい顔もくっきり。音質は始終びりついてますが、まあ、聞けるレベルでしょう。イメージエンタティメントのＤＶＤです。

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