The Last Man On Earth 　地球最後の男（1964年）

DVD Release Date: 8/1/2000

　今回のお題は1971年の『地球最後の男　オメガマン』のリメイク元となった『地球最後の男』（1964年）、主演はヴィンセント・プライス。なんかこの手の映画群、このヴィンセント・プライスとレイ・ミランドとジョン・キャラダインだけ押さえておけばいいと思われるのは間違いでしょうか。まあ、それはともかくとして、この『地球最後の男』なかなかの傑作でありました。

　モノクロ画面によって表現されるなんとも沈鬱な夜明け。町はゴーストタウンと化し、路上にはそこかしこに死骸が転がっています。そんな中、一軒のボロ家で目覚める男。科学者のロバート・モーガン（ヴィンセント・プライス）です。彼は目覚ましを止めると1965年から3年も続けてきたルーティンの仕事を始めるのでした。まず、彼の家に電力を供給している発電機に給油、それから外を回って家の周囲にごろごろしている死骸を片付けます。何故かドアの前に掛けてあるニンニクの輪を手に取ってにおいをくんくん、あ、これは古くってダメだ、家に戻って新しいニンニクを探すヴィンセント、残り少ないにんにくに新しいものを調達してこなくてはとヴィンセントはため息をつくのでありました。

　続いてヴィンセントは壁にかけられた地図を眺めます。どうやら市街の見取り図らしいそれは、その半分ほどが×印で埋められています。今日はあそこに行かなくては。あとどのくらいこんなことを続けなくてはならないのだろう。彼は部屋に備え付けの旋盤で鋭い杭を作り始めます。ここまでの事情説明はすべてヴィンセントの憂鬱そうなモノローグのみ。一体何が起こったのでしょうか、彼は何をしようとしているのでしょうか。

　ステーションワゴンを駆って町へと出かけるヴィンセント。路上に転がる死骸をさけつつ彼がやってきたのは無人のスーパーマーケットでありました。彼はそこで、食料品や新鮮なニンニクを調達し、さらに車を進めます。彼は荒野に車を止めると、そこに開いた巨大な穴に積んできた死骸を叩き込んではガソリンを振りまいて焼き払うのでした。そして彼は地図を見ながら、町のある場所へ行き、そして、寝ているように見える人間に片っ端から手製の杭を打ち込み始めます。ギャーという悲鳴が間断なく続き、見ている私は果てしなくブルーな気分に。そう、どうしたわけか、地球の人類は彼を除いて、死ぬか、吸血鬼になってしまったのです。たった一人残されたヴィンセントはこうして、吸血鬼を退治しつづけていたのであります。いかにもありふれた日常の出来事のごとく、無表情に杭を打ちつづけるヴィンセント、しゃれになりません。

　日没が迫ってきたので、作業を中断し、自宅へ戻るヴィンセント。そんな彼を慕うかのように、わらわらと寄り集まってくる吸血鬼・ゾンビ達（ゾンパイア）。彼らは手にした棒で窓やドアを叩きながら「でて来い、ヴィンセント、出て来いヴィンセント」を叫ぶのでした。これが彼、ヴィンセントの日常なのです。

　翌日またも吸血鬼狩りに出かけるヴィンセント。彼は墓地にちょっとした寄り道をします。墓堂の鍵を開けて中に入り込んだヴィンセントは、横たわる棺桶にすがりついて静かにすすり泣くのでした。この棺は彼の妻のものだったのです。やがて泣きつかれて眠ってしまうヴィンセント。はっと目覚めるて、あわてて時計を見るとこりゃいけない、もう日が暮れてしまっているじゃないか。ヴィンセントはあわてて墓堂を飛び出しますが外はすでに吸血鬼どもが跳梁跋扈する闇の世界となっていました。ヴィンセントは吸血鬼を跳ね飛ばし、強引に車をスタートさせます。自宅もすでに吸血鬼に取り囲まれており、とても車をガレージに入れる余裕などありません。ヴィンセント自身は何とか無事に家に入ることができましたが、車は吸血鬼によって無残にも破壊されてしまいました。ヴィンセントは自身の心の闇を振り払うかのごとく、ジャズのレコードを掛け、酒を飲みながら在りし日の家族を映したフィルムに見入るのでした。ヴィンセントは次第に深い回想に捕らわれていきます・・・。

　明るい陽射し、さんざめく子供たち、今日はヴィンセント、ヴァージニア・モーガン（エマ・ダニエリ）夫妻の一人娘、キャシー（クリスティ・カートランド）の誕生パーティなのです。そこに大好きなベンおじさん（ベン・コートマン　ジャコモ・ロッシ・スチュワート）がプレゼント抱えてやってきたので、キャシーは大喜び。ひとしきり楽しい時間を過ごした後、ベンはヴィンセントに新聞の切り抜きを見せるのでした。その見出しは「謎の伝染病、猛威をふるう。全世界的な流行となるか」ヴィンセントはそんなことはない、じきにワクチンができると楽観的でしたが、ベンは暗い顔で「何か大変なことになりそうな気がするよ」と呟くのでありました。

　このベンの予感は的中します。謎の伝染病はいっこうに治まる気配はなく、ついにキャシーまでもがその魔の手に捕らわれてしまいました。ヴァージニアも元気を装っていますが、かなり具合が悪そう。そんな二人を心配しながら研究所に向かうヴィンセント。研究所では多くの科学者たちがワクチンを見つけようと躍起になっていますが、今のところ成果はなし。懸命に顕微鏡を覗いているヴィンセントのところにベンがやってきて「この病気で死んだ人が生き返って吸血鬼になるという噂をどう思う」「そんな馬鹿なことがあるものか」きっとなるヴィンセント。ベンも色をなして「じゃあ、なぜ、死んだ人たちの遺体を焼いているんだ、患者が日光やニンニクを恐れるようになるのは何故なんだ」

　そうこうしているうちにキャシーの病状は刻々と悪化していきます。ヴァージニアに言い聞かせるヴィンセント「いいか、絶対医者を呼んじゃだめだぞ、隔離されてしまうぞ、遺体を焼かれてしまうぞ」彼は研究所に出かけていきますが、もう誰も働いているものなどいません。皆、病を恐れて引きこもってしまっているのです。ヴィンセントはベンの家を訪ねますが、「僕のことはほうっておいてくれ」と門前払いされてしまいます。悄然として自宅へ戻るヴィンセントでしたが、自宅の前に軍のトラックが止まっているのを見てぎくっ！キャシーが死んでしまったのです。ヴァージニアが動揺のあまり、医者に連絡を取ってしまったのでした。半狂乱になりトラックを追いかけるヴィンセント。火葬場であるあの荒野の穴についたヴィンセントは作業に従事する兵士達に猛抗議しますが、取り合ってもらえる訳もなく、哀れなキャシーの遺体は焼かれてしまいました。

　ついで、ヴァージニアも死んでしまいます。ヴィンセントは彼女の死を誰にも知らせず、郊外の空き地にひっそりと埋葬するのでありました。自宅へ戻り、この悪夢のような現実になんとか対処しようとするヴィンセント。そんな彼の耳に、「入れて、私を入れて」というか細い声が聞こえてきます。ドアを開けたヴィンセントの前に現れたもの、それは今しがた埋葬した筈のヴァージニアでありました・・・。

　吸血鬼どもに壊された車の替わりを探さなきゃ。また憂鬱な日常に戻ってきたヴィンセントの前になんと、プードルが現れます。「まだ生き物が存在してたんだ」と狂喜して、その犬を抱き上げるヴィンセント。彼は犬を洗って手当てしますが、犬の血を顕微鏡で検査してがっかり。「これも病原菌に犯されている」結局ヴィンセントは犬を杭で殺し、葬ることになりました。元気なくシャベルを使って犬の墓穴を掘るヴィンセント。そんな彼の目に飛び込んできたのは、よろよろと歩く女でありました。「ウワッー、人間がいた」脱兎のごとく駆け出して女を追いかけるヴィンセント。あんまり恐ろしい顔をして追っかけたものだから、当然女は逃げますな。「待て、待ってくれ、私は吸血鬼じゃないんだ、ほら、日光の中でも平気だろ」ヴィンセントはようやく女を捕まえました。

　ヴィンセントは女を自宅に連れていき、コーヒーを振舞うのでした。女の名前はルース（フランカ・ベッツオィア）、夫が吸血鬼達に殺されたので逃げてきたのだと言います。にこにこして聞いていたヴィンセントだったが、ふと恐ろしい疑惑に苛まされます。もし彼女も感染していたらどうすればいいのだ？やにわにニンニクを彼女の前につきつけるヴィンセント。ルースはオェー（笑）。やっぱり病気なんだな、お前は。んー、でもあんなに沢山のニンニク、顔の前につきつけられたら、誰でも気分が悪くなると思います。

　実はルースはある生き残りグループの一員だったのです。彼女らのグループは病気の進行を遅らせるワクチンの開発に成功し今日まで生き延びることができたのです。またここで明かされる、ヴィンセントの秘密、彼は若い頃パナマで仕事をしていた時にこうもりに噛まれたことがあって、そのためにこの病気に罹らなくてすんでいるって、ふふ、ああた、そんな馬鹿な（笑）。

　ルースは言います。「あなたは私たちのグループには入れないわ。あなた、吸血鬼を殺して回っているでしょ、その中には私たちの仲間が含まれていたのよ、あなたは私たちにとって、吸血鬼と同じ怪物なのよ、今夜、仲間があなたを殺しにくるわ。わたしはあなたを偵察するためにここに来たの」がーん、愕然とするヴィンセント「知らなかったんだ・・・」やがてルースは病気のために倒れてしまいます。ヴィンセントは彼女の話をヒントに自分の血液から血清をつくり、ルースに、これが絶大な効果を発揮してヴィンセントはついに治療法を見つけたと歓喜するのでありました。

　そんな彼の隙をついて、今や吸血鬼と化した同僚のベンが家に侵入。ルースにせまります。ヴィンセントは危いところで彼女を助けますが、その時数台のジープに乗った黒ずくめの男達が現れました。ルースの仲間たちです、ヴィンセントを殺しにやってきたのです。「逃げて！」と絶叫するルース。ヴィンセントは必死に逃げ回ります。周囲をうろついていた吸血鬼たちを駆逐した男達は、ヴィンセントを教会に追い込んでずどどどーん。銃弾を浴びてばったり倒れるヴィンセント。「お前らはミュータントだ、でも、でも俺は人間だぞ」ルースは彼にしがみつきます。「俺は恐れられていた、か、怪物と」苦しい息の中でつぶやくヴィンセント。映画はヴィンセントを抱きかかえて泣き崩れるルースのすがたでおしまい。

　たったひとり生き残った男が仲間である筈の人間に殺される、これはもろロメロの『いける屍の夜』ですね。この場合、ようやく伝染病の治療法が分かった後だけになお悲劇を感じさせます。また生き返った妻が戻ってくるシーン、これがキングの『ペットセメタリー』に大きな影響を与えているのは言うまでもないでしょう。

　モノクロ・レターボックスのシネスコ。モノラル音声。平均転送レートの低いダブルフィーチャーＤＶＤにしては黒がよく沈んでなかなか立派な画質。輪郭の強調が弱くってぐにゃぐにゃするのには参りましたけど。ウィリアム・キャッスルの『地獄に続く部屋』とのダブルフィーチャー。ダイヤモンド・エンターティメントのＤＶＤ。

　Starring: Vincent Price, Carol Ohmart, See more
　Encoding: Region 1
　Format: Color
　Rated: Unrated
　Studio: Diamond Entertainment
　DVD Release Date: August 1, 2000
　DVD Features:
　2 Full Length Feature Films
　Fully Restored and Enhanced Digital Masters
　Full-screen and widescreen letterbox formats

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