The Road to Hong Kong (1962)

DVD Release Date: 12/3/2002

　本日の御紹介する映画はビング・クロスビー、ボブ・ホープのコンビによるおなじみ、珍道中映画の最終作、『The Road to Hong Kong 』（1962年）であります。前作の『バリ島珍道中』から10年後の続編ですので、もうみんな、老けちゃって、老けちゃって。作中でセルフパロディを連発する彼らの姿には痛々しさすら感じられます。

　警告、警告、このＤＶＤのリージョンは1です。したがって日本国内のＤＶＤプレーヤーでは再生できません。警告、警告。

　冒頭、香港の警察にディアン（ジョアン・コリンズ）が駆け込んできます。「大変です、大変です、二人を助けて、助けてください」一体何がどうしたのという警官の問いに答えて、ディアンは今までの出来事を語り始めるのでありました。ふわんふわん、（場面転換の様子）、ここはインドのカルカッタ、例によってインチキな見世物芝居をやっているハリー・ターナー（クロスビー）、チェスター・バブクック（ボブ・ホープ）、背中にプロペラつけた飛行機械の実演をやろういうのですが、予定していたパイロットが逃げちゃいました。当然、チェスターそのかわりに・・・。「なんで、いつも俺が」とぼやくチェスター、ターナーに「君は肉体労働専門だから、染之助、染太郎のでっかい方だから」と言いくるめられるのが傑作。チェスターはひゃーっと宙に舞い上がりますがが、ごちーんと落下して入院という次第に相成りまする。

　チェスターの怪我はたいしたことなかったのですが、記憶喪失になってしまいました。困り果てたターナーは、何しろ肉体労働専門として使えなくなりますからな、医者のアドヴァイスに従って、世界で唯一記憶を取り戻す薬草のあるところ、チベットのラマ僧院に向かいます。その道中、空港で出会ったのが、秘密組織”第三の楔”のスパイ、ディアンでありました。彼女は誤って、仲間のスパイが盗み出したソ連の画期的ロケット燃料の配合法をチェスターのポケットに入れてしまいます。

　さて、チェスターはラマ僧院で首尾よく記憶を取り戻すことができました。この僧院には記憶を取り戻す薬草の他に、なんでも記憶させてしまう薬草なんてのもありまして、二人はびっくり。世界の貴書を暗記している宗徒が何人もいるのです。やけににやついている宗徒がいると思ったら、彼が暗記していたのは「チャタレイ夫人の恋人」だったというつまらないギャグあり（笑）。そして、ラマの高僧（フレックス・アイルナー）は二人に「薬草を使ったものは一生この僧院に留まらなければならない」と言いわたすのでした。仰天する二人、何故か、黒人の宗徒に捕らえられますが、「ねえ、君たち、『シンガポール珍道中』とか、『アラスカ珍道中』って映画、見たことある？」首を振る宗徒に、「せっせっせ、ぱらりこせ」とやって、油断させたところをぼかんとノシてしまいました。「うひひ、まだ通用するじゃん、この手」風を巻いて逃げ出す二人。ちゃんと何でも記憶させてしまう薬草を持ったままなのですから、抜け目がないのです。

　カルカッタへ戻ってきた二人、ホテルで”記憶ショー”をやれば、稼げるぞとほくほくしております。モノは試しとターナーはチェスターのポケットにあったあの秘密書類の内容を薬草を使って彼に記憶させるのでした（笑）。覚える端から、書類をコンロにくべて燃やしてしまうターナー。全部燃やし終わったところで、あのディアンが現れます。拳銃を突きつけて「あの書類を返しなさい」ふと、コンロに目をやってぎょっ。「燃やしちゃったの？」そんなディアンに「まあ、まあ、悪いようにはしないから、五分後に下のバーで会おう」というターナー。バーでターナー、チェスターが書類の内容を完全に記憶していることを明かすのでした。「2万5千ドルだすから、その情報を私にチョウダイ」ディアンの申し出に飛びつくターナー。もちろん、チェスターには2.500ドルって誤魔化しているんです。それでもチェスター大喜びなんですから。彼等はディアンの頼みに従って、香港へ向かうことになりました。

　ホテルの部屋で浮かれて歌い踊るチェスターとターナー、「香港へ行こう、ゲイシャがキモノで待ってるぞ」まあ、野暮なつっこみはやめときましょうや。

　香港に到着するなり機内で、ラマ僧院の使いにまんまと薬草を取り替えられてしまうチェスター。そうとは知らないまま、二人はタクシーで、ディアンに指定された高台の建物に向かいます。建物に入ったとたん、チャイナ服の中国美人に迎えられたのでにやにや、「こちらへどうぞ（PLEASE THIS WAY）」と中国美人が腰に捻りを入れながら歩き出したのを見て、「こんな風に歩くのかい（WALK THIS WAY）」同じように腰をくねくね。彼女の指示どおり、ソファに腰掛けると、がちゃん、がちゃん、金属ののベルトがソファから飛び出てきて、動けなくなってしまいました。そのままサンダーバードよろしく、急降下、「わお、凄いエレヴェーターだな」がちょーんと下についたと思ったら、今度はドアが次々と開いて､水平方向にごーっ。窓の外をみて驚く二人、魚が泳いでおりますな（笑）。

　二人の乗ったソファーはある部屋に入ると急停車。そこにいたのは秘密組織”第三の楔”の首領（ロバート・モーレィ）とディアンでありました。ターナーとチェスターが縛めを解かれて立ち上がると、ソファーが猛スピードで戻っていくのに大笑い。彼等はさっそく薬草を使ってチェスターの記憶を取り戻させようとするのですが、なにしろすり返られてしまっていますからな、当然、効果なし。激怒した首領、”第3の楔”が米ソに先駆けて打ち上げようとしていた月周回ロケットに二人を乗せるよう命令するのでした。「実験用のチンパンジーのかわりだ」二人は大慌てで逃げ出します。しかし、上手い事誘導されて、チンパンジー用の宇宙服が置いてある部屋に追い込まれてしまいました。「水の中にはいるんだから、これを着ろ」と叫ぶターナー。でもチンパンジー用だから（笑）、「わ、なんだ、腕が凄く長いぞ、どんな奴に合わせたんだ！」「あ、あれ、まっすぐに立てない、背中が曲がったままだ！」ということになるんです。あれよあれよと打ち上げられてしまう月周回ロケット。なんだ、これなら、ソ連から燃料配合法を盗む必要なんてないじゃん（笑）。

　テレビモニターを眺めながら、大成功だと盛り上がる首領、ディアン、”第三の楔”の主任科学者ゾーブ博士（ウォルター・ゴーテル）。さあ、食事の時間だ。でもやっぱりチンパンジー用だから、機械仕掛けで皮を剥かれたバナナが次々にターナーとチェスターの口に押し込まれていくだけなんです。そして、チューブから牛乳がちゅっー。突然、ゾーブ博士が叫びます。「しまった、磁気嵐だ、食事マシーンが狂ってしまった」突然動きを早めるマシーン。バナナがぐちゃぐちゃとターナーの顔に押しつけられ、大量の牛乳がチェスターをずぶぬれにする大騒ぎ。ま、あんまり面白くないですけどな。

　いよいよ月に最接近、チェスターは月の光に魅入られて、例の秘密書類の内容を呟きだします。これがのちのちの大きな伏線となっておりますので、どなた様もゆめゆめお忘れなきよう。そして、二人は地球に見事、帰還するのでありました。”第三の楔”基地で英雄のように迎えられるターナーとチェスター。凱旋した二人に”第三の楔”の隊員たちが、紙ふぶきをまいているという・・・（笑）。しかし、首領とゾーブ博士はチェスターから燃料の配合法を聞き出したうえで、二人を解剖してしまおうと考えていたのです。宇宙旅行の影響を調べるためって、ひどい話だなあ。

　ディアンは両耳に月のように見える馬鹿でかい真珠のイヤリングをつけて、チェスターを催眠状態にし、秘密を聞き出そうとしますが、あんまり二人がかわいそうになったので、途中でやめてしまう。「こら、この裏切り者！」ディアンはターナー、チェスターと共に秘密基地を脱出します。えー、この脱出する時にですな、潜水艦を奪って水中を疾走するのですが、三人が出てくるのはやっぱりあの高台の建物というのはどこか変じゃありませんかね。

　三人を追う、”第三の楔”、三人は香港の雑踏に紛れようとしますが、服装が周りと違いすぎていてチェスター、ぼやくこと、ぼやくこと。「こんなんじゃダメだよ」「良い手があるぞ」とターナー、「特殊効果さん、お願いします！」とたんにぱっと中国風の衣装になってしまうという・・・（笑）。警察に助けを呼びに行くというディアンと別れた二人は劇場に追い詰められてしまいました。と、そこで、ショーをやっていたのは、なんとドロシー・ラムーアその人ではありませんか。ターナー・チェスターは顔を輝かせて「ドロシー、助けてくれよ、『シンガポール珍道中』や『アラスカ珍道中』を覚えているだろう？僕ら、チームだったじゃないか」「そんなの、誰も覚えてないから、アタシ、こんなところでドサ周りしてんのよ！」とにもかくにもドロシーのショーに出演させてもらうことになりました。

　こんな自虐ギャグ（早口言葉ではありません）、やめよおよう。

　歌を歌うドロシー、衣装のヒゲをつけて、舞台上に現れたターナーとチェスター。おかしいと思った”第三の楔”の隊員が、劇場の係員殴り倒して、セットのお月様をがらがら下げると、あらら、またチェスター、おかしくなって、大声で秘密の書類の内容を喋り始めてしまいました。「しめた！」とその内容を書き留めるゾーブ博士。「よし、これでもうあいつらに用はない、基地に戻って打ち上げだ！」はい、ここで、冒頭の警察署に戻って、ターナー・チェスター・ディアンは警官隊とともに”第三の楔”の基地に躍りこむのでありました。

　ところが、やけになった首領、兼ねてから用意してあった原爆ミサイルの発射指令を下します。危ない、アレを止めないと世界の破滅だ！ロケットへ急ぐターナー・チェスター・ディアン。しかし、間に合わず彼等もろとも発射されるロケット！よし、こうなりゃ最後の手段とロケットの操縦桿をぐりぐり動かすチェスター、基地でモニターしていた警官、「あ、コースが変わったぞ、あーあ、地球は救われたけど、あいつら、冥王星へ行っちゃったよ、もう一生帰ってこれないな」

　ラスト、冥王星で能天気に唄う三人、「僕達はチーム、素晴らしいチーム」あれ、ディアンはどこに行った？彼女は何故か冥王星にきていたイタリア人宇宙飛行士にべったり。あぜんとするターナー・チェスター、「畜生、特殊効果さん、お願いします！」イタリア人宇宙飛行士はワイヤーに吊られて消えてしまいます。改めて、ターナーとディアン、ぶちゅぶちゅぶちゅちゅーとキス。チェスター、憤然として、「特殊効果さん、ターナーもやっちゃってください」そのとたん、ワイヤーで吊り上げられて「なんでこうなるの」と叫ぶチェスターでありました。

　えー、昔から喜劇チームは行き詰まると宇宙に行くなんて申しましてな、確か、アボット・コステロもそうじゃなかったかな、『凸凹宇宙旅行』。この作品、ハリウッド製作ですらなく、メルナー・ピクチャーというプロダクションがイギリスで撮影したものであります。

　モノクロ、レターボックスのシネスコ収録。モノラル音声。英語字幕、クローズドキャプション付画質・音質ともに優秀。なお、この作品にはフランク・シナトラ、ディーン・マーティン、ピーター・セラーズ、ザ・ザ・ガボールなどそうそうたるスター達がカメオ出演しています。ＭＧＭミッドナイトムーヴィシリーズのＤＶＤ。

　Starring: Bing Crosby, Bob Hope
　Director: Norman Panama
　Encoding: Region 1
　Format:Closed-captioned, Widescreen
　Rated: Unrated
　Studio: Metro-Goldwyn-Mayer
　DVD Release Date: December 3, 2002

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