Atom Age Vampire （1960）　怪談生娘吸血魔

　この『怪談生娘吸血魔』（60年製作）は原題を『アトム・エイジ・ヴァンパイア』と申しまして、この奇天烈なる邦題をつけたのはもちろん大蔵映画。イタリア製作のいわゆるユーロ・トラッシュ映画であります。この映画、かの有名なるマリオ・バーヴァプロデュース作品とよく間違われるのですが、実際のプロデューサーはマリオ・フーヴァ（エリオ・イッポリート・メリーノの別名義）。ブルース・リーならぬブルース・李みたいなもので、どうにもしょうがないんであります。

　イタリアの港町のクラブ　「ホッガー」でダンサーとしてぶいぶい言わせていたジャネット（スザンナ・ロレッタ）、本番前に恋人のピェｰル（セルジォ・ファントーニ）が尋ねてきてくれたので、大喜びですわ、あなた。しかし、ピェｰルは彼女に別れを告げに来たのでありました。絶望し、楽屋を飛び出すジャネット。車をがんがん飛ばしているうちに運転を誤って崖からダイブ！車は大炎上してしまいます。

　3ヶ月後、命は取り留めたものの、頭部にヒドイ火傷を負ってしまったジャネット。顔面を包帯でぐるぐる巻にされて病院のベッドに横たわっております。

　ここで場面が変わって登場する、キチガイ博士のレヴィン教授（アルベルト・ルポ）、彼は助手のモニカ・リヴェラ（フランカ・パリス・ストラー）や喋りたくても喋れないお×のサーシャ（ロベルト・ベルタ）とともに、自宅の研究所で放射能を利用した、組織再生薬を研究していいました。モニカへの人体実験によって、薬の効果を確信するレヴィン教授、「みんな、君のお陰だよ」とモニカを抱きしめます。モニカ、ぽっ。

　ジャネットは毎日毎日、自分の不運を呪って泣いてばかり。思い切って、顔面を覆っている包帯を外すとそこに現れたのは彼女の左頬を無残に覆う、醜い傷跡でありました。ギャｰ、自分の美しさだけが心の拠り所であった、安い女のジャネット、絶望のあまり自殺を考えるようになります。しかし、そこに現れたのがあのモニカ。彼女はジャネットに「レヴィン教授だけがあなたを救えるわ」と話し、良かったら博士の研究所へ来なさいと誘います。ジャネット、逡巡しますが、結局死ぬよりはましだわと考えて怪しいさ満点の研究所を訪れるのでありました。その後、彼女がいなくなった病院にのこのこ現れるピェール。考えてみればこいつが全ての原因なのに、なに涼しい顔して見舞いに来やがるのか。

　さんざん泣いたり喚いたりしたあげくに、レヴィン教授の開発した組織再生薬デルマ28を注射されるジャネット。するとあっという間にあの醜い傷跡が元通り。まるで、通販番組のような効果の早さです。狂喜するジャネット。レヴィン教授はそんな彼女に、お祝いだといって、シャンペンを飲ませ、「君は美しい、でも、その美しさを取り戻したのは僕だ」とかなんとか言っちゃって、キスするんですよ。ぶちゅぶちゅぶちゅちゅー。教授の愛人であったモニカ、そんな二人に嫉妬して、自室でぎりりとハンケチ噛んでこらえております。きききー、あ、あの女、私の教授を・・・。やな展開ですなー。

　しかし、デルマ28の効果は長く続きませんでした。再び現れるジャネットの傷跡。ほらほら、病人に酒のませたりするから。しかし、デルマ28の合成には新鮮な人間の脳下垂体が必要だったのです。教授は苦悩したあげく、モニカを殺害（ひでー）、デルマ28を合成してジャネットに注射するのでした。

　モニカの検死のために駆けつけた警視（イヴォ・ガラーニ）、怪しい教授の態度に疑いの目を向けます。教授、そうとは知らず、ぐにゃぐにゃになったガラス瓶の置物を見せながら、「私は広島で放射線治療の研究をしておりましてなー、これはその時のお土産ですわ」こ、この人でなし！こいつはですな、なんだかよく分からないけれども、自ら、デルマ28を注射して、吸血鬼へと変身し（血は吸わないけれども）夜な夜な町へでて、若い娘さんたちを襲うのですぞ。ていうか、アンタが変身するんかい！

　ジャネット、怪しい教授の態度についに居たたまれなくなり、研究所を脱走し、船乗りであるピェｰルに助けを求めようとします。港でピェｰルと会ったジャネット、教授のことを訴えますが、後をつけてきていた教授たちに襲撃され、ピエールは頭をどつかれて海へ放り出され、ジャネットは研究所へ連れ戻されてしまいます。どうにも乱暴で、ほんとに教授か、この男は。

　救助されたピェｰルは警視とともに研究所へ。ジャネットを探しますが、その姿はどこにもなく不承不承引き上げます。しかし、疑いを捨てきれない警察はその総力をもって、教授を監視することになるのでした。そんな中、また若い娘さんを求めて町へ繰り出す愚かな教授。映画館でうまく尾行を撒いて、鍵も掛けずにがーがｰ寝ている娘さんのところへ忍び込みます。いきなり首をがっと締めあげる教授でしたが娘さんの犬に太もも齧られ血を流しながら逃げ出したという・・・（笑）。

　研究所へ戻った教授、薬もやらないのに、なぜかまた吸血鬼（血は吸わないけれども）に変身してジャネットに迫ります。彼女の悲鳴を聞いたピェｰルが駆けつけますが、変身した教授にあっさりと叩き伏せられてしまいます。ジャネットを抱いて右往左往する吸血鬼（血は吸わないけれども）、押し寄せる警官隊、温室に立てこもりますが、あまりの悪行にたまりかねたサーシャが教授の背中にはさみをぐさっ。ああっ、ジャネットは救われたのでありました。

　でも教授死んじゃったから、もうデルマ28作れないですよね、この薬ないと、またジャネットの傷、ぶわぁ、浮かんできますよね。そこんとこ、どうするつもりなんですかね。まあ、どうでもいいですけど、こんな映画。

　モノクロスタンダード　モノラル。画質・音質ともに極悪（笑）。暗すぎて細かい部分が見えないし、台詞が聞き取りずらいったらありゃしないんです。それでいて、登場人物がここを先途とばかりに喋りまくるんですから、もうたまんなかったですヨ。マダシー・エンタティメントのハリウッドホラー・コレクションの一本。『BLOODLUST』とのダブルフィーチュア。なぜか、ベティ・プープの短編アニメが一本（人食い土人につかまるやつ）が収録されております。

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