Donovan's Brain (1953)　ドノヴァンの脳

　本日のお題はカート・シオドマック作『ドノヴァンの脳髄』の映画化、1953年製作の『ドノヴァンの脳』です。例によってネタバレばんばん、うっかり読んじゃったヨ！とか文句をいわれても私は一切関知しませんので、御了承ください。

　警告、警告、このＤＶＤのリージョンは1です。したがって日本国内のＤＶＤプレーヤーでは再生できません。警告、警告。

　パトリック・コーリー先生（ルー・エアーズ）の趣味は脳味噌ならなんであれ、ほじり出していかしておくという、いささか常軌を逸したものなんです。先生は今日も今日とて小さな猿から友人の外科医フランクの助けを借りて脳味噌ほじりだし、培養液につけ込んで、「生きている、生きている」と大騒ぎ。奥さんのジャニス（ナンシー・デイヴィス）はちょっと困り顔です。

　そこへ降ってわいたような飛行機事故。地元の保安官がコーリー先生に助けを求めてきますが、これはまさに猫にかつぶし、私にＤＶＤのようなもの。瀕死の重傷を負っていた億万長者のＤ・Ｈ・ドノヴァンを自宅へ運び込むと、助かりそうにないのをいいことに、ナイショで脳味噌ほじりだしちゃったのでした。遺体の頭にでっかい傷跡が残ったのに、これは事故によるものだとごまかすコーリー先生、そんな言い訳ないと思うよ。

　ドノヴァンの脳味噌を培養液に浸して生きているのを確認したコーリー先生はまた良からぬ事を考え始めます。オシログラフで脳波が測定できるからこの脳味噌は何かを考えている筈だ、この脳味噌とコミュニケーションをとるいい方法はないか、うーん、うーん、そうだ、テレパシーがあるじゃん。コーリー先生、科学者のくせにビリーバーだったのね。先生、自動書記でドノヴァンの脳味噌からのメッセージを受けとって大喜びするのですが、そんな彼を不安な面持ちで見守る、ジャニスとフランク。無理もないですな。

　この辺からコーリー先生、おかしくなります。ドノヴァンの常宿であった一流ホテルのスイートルームを借りきり、ドノヴァンの預金を引出すわ、仕立て屋で生前のドノヴァンが好んでいた生地のスーツを割増料金で作らせるわ、葉巻をぷかぷかやりはじめるわ、やや、いつの間にか足を引きずっているぞ、そ、それにあんた、なまってるやん。そうです、コーリーは何時の間にか、ドノヴァンの脳味噌に支配されていたのでした。

　実はドノヴァンは金儲けのためならどんなことをも厭わない、究め付けの悪党だったのであります。よりによってこんな奴の脳みそを・・・。コーリー＝ドノヴァンは秘密を嗅ぎ付け、金を要求してきたフリーの記者、ハービィ・ヨーカムをおびき寄せ、テレパシーで操り、車ごと崖からダイブさせて抹殺。さらには、もはや、必要のなくなったジャニスとフランクをも手にかけようとするのでした。

　ヘンな特撮に頼ることなく、喋り方と歩き方を変えるだけで、ドノヴァンの脳味噌に憑依されたコーリーを表現したルー・エアーズの演技が秀逸。つまんないメロドラマと評されることの多い本作ですが、彼の演技だけで見る価値十分。また、ジャニス役のナンシー・デイヴィスは実は後年のファーストレディ、ナンシー・レーガン、さらにルー・エアーズは他の映画でレーガン元大統領の最初の妻、ジェ−ン・ワイマンと共演したことがあるという、なんだかやけにレーガンがらみが多い映画ですって、そんな役に立たない、豆知識ためこんでどうするんだ、俺。

　モノクロ・スタンダード。ドルビーデジタルモノラル。画質・音質ともに優秀。ラストの嵐の場面にのみ、ノイズが目立ちますが、贅沢を言っちゃあいけません。クローズドキャプションつき。経済関係の英語にうといので、ドノヴァンの悪巧みが正直、よく理解できなかったです、ごめんなさい。

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