It! The Terror From Beyond Space (1958）
　　　　恐怖の火星探検

　本日のお題は、58年製作の『恐怖の火星探検』です。監督が56年の『海獣の霊を呼ぶ女』（笑）、57年の『暗闇の悪魔　大頭人の襲来』（笑）のエドワード・Ｌ・カーン。なんてこたぁない低予算映画なのですが、ダン・オバノンの『エイリアン』、いわずと知れた傑作ＳＦホラーの元ネタという噂がありまして、それを念頭に置いて見てみると、なるほど、これはよく似ている。

　警告、警告、このＤＶＤのリージョンは1です。したがって日本国内のＤＶＤプレーヤーでは再生できません。警告、警告。

　映画は火星表面に不時着したロケットの残骸という意外なオープニングで幕を開けます。実はこのロケット、人類史上初の火星探検船、チャレンジ1-4-1のなれの果てでありました。不時着から6ヶ月、火星に到着した救出船、チャレンジ1-4-2の乗組員はたった一人生き残っていた、1-4-1の船長、カルザース大佐（マーシャル・トンプソン）を発見しますが、彼が生き残る為に、残りの乗組員を殺害したのではないかと疑い、地球に告発します。軍法会議に掛けられることになったカルザース大佐を伴ってチャレンジ1-4-2は火星を出発、ここまでの事情が地球での記者会見のシーンを取り混ぜながらナレーションで語られるというスピーディな展開がよいです。

　離陸作業中に鳴り響く警報、チャレンジ1-4-2の船長、ヴァンハーゼン（キム・スポルディング）、貨物搬入ハッチの一つが開いたままなのに気づきますが、乗組員のコルダー中尉が「あっ、ぼく、さっきゴミをすてて開けっぱなしにしてました、ども、すいません」と余計なことを言うもんですから、納得してそのまんま。ほら、言わないこっちゃない、何やら怪しい影がすいすいとロケット内に侵入いたします。

　離陸作業が済んで、ほっとして食堂で飯を食う乗組員達、なるほど『エイリアン』とそっくりです。クルーの中に二人の女性が混じっているのも同じ。まさか、アンドロイドはいやしないだろうな（笑）。そんな中、なおも、私のクルーは正体不明の怪物に攫われたのだ、私は殺してなどいないと言い募って他の乗組員から馬鹿にされるカルザース大佐、ヴァンハーゼン船長は別室へ彼を引っ張っていき、チャレンジ1-4-1の残骸から発見されたという頭頂部に小さな穴の開いた頭蓋骨を見せるのでした。「弾丸を使うモンスターは1種類し
かいない」おお、名台詞だ、ヴァンハーゼン船長。

　そして、いよいよ始まる虐殺劇、乗組員の一人、ケインホルツ（トム・カリー）は下のデッキから聞こえてきた、不審な物音に気づき、よせばいいのに、調べにいってしまいます。案の定、モンスターにとっつかまえられるケインホルツ。どったんばったん、ばしびしぼしん、どてぽきぐしゃ、「ぎょあわえー」殺された。この悲鳴を聞き付けたのはカルザース大佐一人、「何かきこえただろう」と騒ぎ始めます。他のクルーは「まーたはじまったよ」とにやにやするのですが、なるほど、ケインホルツが行方不明になっていることが分かって、ヴァンハーゼン船長は捜索を命令。その捜索中にまたまた怪物に襲われるジーノ乗組員、兄貴のボブ乗組員は、半狂乱になってしまいます。

　やがて、通風孔に詰めこまれたケインホルツの死体が発見され（通風孔ときたら『エイリアン』）、続いて排気孔の捜索を志願したパルドゥ少佐（ロバート・バイス）がジーノ乗組員を発見し、助けようとしますがモンスターに阻まれてしまいます。愕然とする乗組員たち。とりあえず、通風孔、排気孔に、手榴弾の罠を仕掛け、対策をねることになりました。

　でも、それぞれ、5個も6個も手榴弾をしかけるのはいかがなものか。ロケット自体が吹っ飛ぶんじゃないか。やがて、通風孔から、現われた怪物、ちゅちゅちゅどどーんと手榴弾がバクハツしますが、何の効果もなし。煙ばっかで、何の威力もない、まるでドリフのコントのような手榴弾だったのですな。

　このれんじゅう、とにかく、やたらと武器を持っているんです。コルト・ガバメントやカービンの銃器類は言うに及ばず、手榴弾、ガス爆弾、しま
いにゃバズーカまで出てくる始末。緊張感だだ落ちなの（笑）。ダン・オバノンが『エイリアン』でリプリー達に火炎放射器しか与えなかったのはこの映画の二の舞になることを嫌ったためでしょう。

　このモンスター、人間の血を余さず吸ってしまい、爆弾も銃撃もガス攻撃も電撃もさらには原子炉からの放射能攻撃にもびくともしないイヤな奴で、逆にモンスターのモンスターバクテリアにやられるクルーが続出する有様です。モンスターを背後から奇襲しようとしたヴァンハーゼンもエアロックに閉じ込められてしまいます。

　こいつ、本当に火星知的人類のなれの果てかよ。とうとう最上階のコントロールルームに追い詰められる乗組員達。カルザース大佐のヤケクソのような提案にしたがって宇宙服を着はじめます、いったいどうしようというのか！

　げんばりばりとハッチを破ってコントロールルームに侵入するモンスター。ああ、カルザース大佐が、エアロックを開放しようとしますが、間に合わない。そこで、ヴァンハーゼン、自分の身を犠牲にして、上部デッキのエアロックのハッチを吹き飛ばします。爆発的な減圧が起こり、モンスターは真空の宇宙へと吸出されていったのでありました（おお、これこそ『エイリアン』）とはならなくて、モンスター、窒息して死んでしまうのはいかになんでも地味すぎます。

　ラスト、火星は敵対的だ、宇宙開発は火星をさけて行われるべきだとのコメントが流れて映画は終了。弱気ですなー、地球人類。

　モノクロ、スタンダード、モノラル。時折ぱちぱちと白いノイズが入りますが良好な画質と言えるでしょう。クローズドキャプションがついていますから、『エイリアン』マニアは買うべし。

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