The Beast Of Yucca Flats（1961年）

　『ビースト・オブ・ヨッカ・フラッツ』、あのエド・ウッドの盟友であったアンソニ−・カルドザのプロデュースによるこの映画、『プランナイン・フロム・アウター・スペ−ス』が『十戒』に見える！とか、メジャースタジオの映画に見える！などと言われているという・・・。

　アタマッからいきなりシャワー後らしき、トップレスガール、型どおりにシーツを体にまいてベッドの上でくつろいでいると、男の手がしゅうっと伸びてきて首をきゅっ。ようやくタイトルになります。。このシーン、いわゆる“つかみ”で本編とは何の関係もないのに呆れますが、こんなことでめげているようではこの映画は見られません、みんな、がんばれ。

　ソ連から亡命してきたロケット学者、ヤボアスキー、セスナでヨッカ・フラッツの核実験サイトに連れてこられます。待ち構えていたＫＧＢエージェントとの間におこる激しい、しかしまったくメリハリのない銃撃戦、ひとり逃れたヤボアスキーは実験予定地に迷い込み、タイミングよく起こった核爆発の放射線をたっぷり浴びて冷血無情、極悪非道、あうあうとしか言えないあんぽんたんのビーストと化してしまったのでありました。だいたい、この手のプロットなら、科学者をフツーの役者が演じてますな、ビーストになってからトー・ジョンソンを使うというのが常道なのですが、この映画は最初っからトー・ジョンソンなの。あんな科学者いねえって。ちなみにこの映画、アフレコの面倒を嫌ったのか出演者の台詞がほとんどありません。ストーリーはすべて重々しい調子のナレーションで語られます。

　さてト−・ジョンソンは砂漠をよろよろ歩いて車の故障で困っていた夫婦に襲いかかります。ボンネットを開けて故障を調べていた夫の首をきゅっ！後部座席でタバコを吹かしていた妻の首をきゅっ！妻を抱えてよろよろ洞窟に運び込んだのでありました。殺人の知らせを受けて出動した保安官二人組、首尾良く洞窟から妻を救出し、殺人鬼の姿を求めて、うろうろ（いや、本当にうろうろしているんだ、これが）あたりを探し回ります。

　ここで新たなる出演者、車で旅行中の家族が登場。二人の男の子が遊び回っているうちに道に迷ってしまいました。パパ、ママに「ここにいろ」と言い残して探しに行きます。いっぽう、保安官二人組は地上からの捜索を諦め、セスナ、冒頭で出てきた奴ね、を使うことに。一人がライフル抱えてセスナに乗り込むと、待機役を仰せつかったもう一人が「まず撃て、質問はそれからだ」剣呑きわまるアドヴァイス、危ないからやめなよ、そんなこと。どうも、この保安官は法律というものを理解してないフシがありまして、セスナから、子供達を探すパパを見つけると、何も考えずにライフル乱射、がーん、ががーん、ついにばったり倒れる可哀想なパパ。ナレーションが「まず撃て、質問はそれからだ」と先ほどのアドヴァイスを繰り返します、あ、あほかぁ！でもパパ、実は軽傷（笑）立ち上がってあっさりと逃げ出すのでした。

　この余計なエピソードの間中、砂漠をさまよっているトー・ジョンソン、つえをつきながらよろよろ歩くその様は殺人鬼というよりはただの気の毒なオッちゃん。それでもビーストですから、子供達を見つけると、わおわあおおと叫んで襲い掛かります。そこに保安官達が現われ、何の緊張感もない格闘の末にトー・ジョンソンを射殺、子供達も助かって、めでたし、めでたしって、めでたくないわあ、お前らさっき、パパを散々撃ったじゃないかよ、殺人鬼はこいつだけど、さっきのパパはなんだろうという“粗忽長屋”の下げみたいな、そんな疑問は頭に浮かばないのかああ、それにト−・ジョンソン、死んだはずなのに、エンディングまでモゾモゾ、モゾモゾするなあ、よっぽどがまんのきかないタチなのかあ、お前はああ！だから、300ドルしか出演料もらえなかったんじゃあ。

　モノクロ、ドルビーデジタル・モノラル。無駄な高画質、無駄な高音質、イメージエンタティメントのＤＶＤなので例によって紙製ケース、ノリ弁式フタ。犬に噛まれたとでも思って早く忘れることにします。

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